大雪山山行報告

文責:Y住

メンバー:CLH塚 Y子、Y住 M
日程:05年7月14日(木)〜18日(月)

歩程:第1日:羽田発17:40―19:00旭川空港―20:30旭岳温泉(民宿泊)
 第2日:6:30旭岳温泉―(ケーブルカー)―6:50姿見駅同発7:30−10:00旭岳頂上―12:00北海岳―14:30白雲岳避難小屋(H塚さん白雲岳ピストン→17:00)(テント泊)(各時刻は記憶に頼ったため若干不正確。以下同様)
 第3日:同避難小屋発5:30―11:00忠別岳―13:00五色岳―14:00化雲岳―16:00ヒサゴ沼避難小屋(テント泊)
 第4日:同避難小屋発6:00−10:00北沼分岐―12:00南沼キャンプ指定地(トムラウシ山ピストン→14:00)(テント泊)
第5日:(最初予定通り十勝岳方面に向け出発したがすぐに濃霧及び強風のため撤退、トムラウシ温泉に下山を決定)同キャンプ地戻り再出発5:30−9:30カムイ天上分岐―12:00トムラウシ温泉(同ホテル泊)

概要 北海道への往復も含め7日間にわたる北海道大雪山テント泊縦走は、登山開始から4日目でいざこれから最大の難関に挑むという段になって、残念ながら、天候悪化(濃霧と強風)のため、途中から下山しましたが、最大の目標であるトムラウシ山に登れたので、満足出来た山行でした(計画では旭岳から十勝岳までの縦走)。
大雪山は、それはそれは自然がまだまだ残る、大花園の連続で、稜線が平坦であるため、どこまでも花園が続いてよく見えました。いつまでもこの素晴らしさが維持されることを心から願って止まないところです。
 今回の山行は、同じ山の会の私よりも経験豊富で体力もあるH塚さんと2人で行ったのだけれど、私の方が荷物は軽いのにへた張り気味でした。また、平塚さんには、アルファ米をおいしく食べる方法やその他役に立つ多くの事柄を教えて頂き感謝感謝です。 でも途中撤退した今回のリベンジは、何故かそれぞれ別個にやろうということで一致した二人でした。反省点としては、少ない現地情報に頼ったため、アイゼンを用意していなかったこと。尾根上の雪渓が予想よりも多く(特にオプタテシケ山が)、早朝は凍っていて滑落の危険があったことでした。

移動日:栃木→旭岳温泉 晴れ
  羽田を17:20発のJAL航空で発ち、旭川空港から予約したタクシーで旭岳温泉の民宿についたのが21時近く。ガスボンベはこのタクシー会社に予約で購入し、小型6個と乗車賃あわせて1万円也。温泉に入り、早々に就寝。

登山開始第1日目:旭岳温泉→白雲岳避難小屋:快晴微風
  民宿の元気おばさんが作る5時の朝食を掻きこむ。同じ登山客も2グループ、計7,8名いた。食後直ちにケーブルカー駅に向かう。駅まで直ぐだったが、既に20名近くがならんでいた。後続もぞくぞく押し寄せてきてさすがに夏山シーズン到来の旭岳、6時前からケーブルカー駅は瞬く間に長蛇の列が出来上がったが、タッチの差で我々は6時半の始発に乗れた。満員のケーブルカー内でやはりテント山行らしき6,7名のグループと出会う。このグループとは、ヒサゴ沼避難小屋まで宿泊地と歩程は同じで時々顔を合わせた。トムラウシ山はピストンで行き登頂後天人峡温泉に降りるとのことだったが、第3日目朝に日本庭園であったときは、残念ながらトムラウシはあきらめたといって天人峡めざし下山して行った。天人峡温泉までの下山ルートは長丁場だ。
約20分で終点の姿見駅着。駅周辺も結構雪渓が残っている。用足しなどしていよいよ出発。快晴で何とも気持ちがいい!ハイキング風の軽装登山者が多く旭岳―黒岳(層雲峡温泉)縦走の人たちも。トムラウシ方面を目指すらしきテント縦走グループは数パーティ。荷物の量は、何故か我々2人が一番重そうにしていた。このことは、後で地元の登山者と言っていたご夫婦に十勝までとはいえ重過ぎるのではと指摘され、今後の我々の反省点になった。






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ケーブルカーの姿見駅   遥かにトムラウシ山から
近くからの旭岳       十勝岳までを望む

 姿見駅から旭岳までは約3時間、砂礫地のだらだら続く登りだが、早くもコケモモやチングルマなどの高山植物の群落がぞくぞくと現れる。旭岳頂上からは、遥か目指す十勝岳から反対側に黒岳、さらに遠くに知床半島らしき影まで360度の大展望でした。
 旭岳直下の雪渓では尻セードを何回か試みるがいま一の緩斜面だった。大勢の登山者がいたので、平塚さんはあきれたような顔をしていた。








旭岳頂上にて       北海岳から白雲岳に向か
              う途中で雪渓とお花畑

若干の起伏を経て間宮岳、北海岳を越える。 ここいらは、あまり高低差がないので石楠花の大群落がかなり遠くまで拡がっているのが良く見える、それが繰り返し表れるのには、さすが北海道大雪山と感動のしっ放し。北海岳で黒岳方面縦走者と別れると、そこからはぐんと人影がなくなった。銀泉台からの登山グループと時々すれ違う。聞くと向こうも花が凄かったという。









 遥か下に白雲岳避難小屋  白雲岳避難小屋で我々の
              テント(赤色)

 白雲岳分岐で会った人から、テント場が昨日は混んでいたとの話を聞き、白雲岳登頂は後にして避難小屋のテント場へ急ぐ。雪渓をいくつか横断してかなり 降りたところに白雲岳避難小屋があった。pm2時半着。
 20は張れそうだが既にテントが5,6個あり、急ぎ我々もテントを張った。  小屋には管理人さんが3人くらいいたが、何も売っていなかった。白雲岳へピストンしようと行きかけたが、戻りが5時過ぎになりそうなので、後を考えて私は取り止め。テントで寝て待とうとしたが、隣に来た大人数グループ登山者のおしゃべりがうるさいこと!ほとんど寝られないまま5時頃に平塚さんが戻ってきた。白雲岳の花は少なかったとか。夕食のキシ麺は、平塚さんが持ってきた海苔や揚げ玉、乾燥ネギなど具や七味唐辛子で実にうまかった!ちょうど隣に来た地元登山者のご夫婦がここの雪渓の水はキタキツネがこの高度までは来ないので、煮沸の必要はないという。冷たい雪渓の水をおいし く飲む。その日は7時半ごろ就寝したが、寝る直前、隣のテントでキタキツネが食べ物を嗅ぎ付けて来ていると騒いでいる。さっきごくごく呑んだ雪渓の水は、エキノコックス菌は大丈夫か???

 登山開始2日目:白雲岳避難小屋→ヒサゴ沼避難小屋:ガス後一時晴れ後ガス
  4時少し前に起床。すると、近くのテントで外に出しておいた食料をキタキツネにやられたといって騒いでいた。朝食は昨夜ふかしたアルファ米に残しておいたキシ麺のおつゆを入れて雑炊にして食べる。今日は、上り下りは少しあるが、大部分が平坦なコースを約8時間の予定。

  小屋の直ぐ下の雪渓を渡ると3時間近く東側が少しガレ落ちている縁に沿って、えんえんと続く平坦な砂礫地を行く。西側はハイマツの林。ガスっていてあまり遠望は効かない。起伏はほとんど無いため歩くのは楽だが、ガスでホワイトアウトになったら、地図とコンパス無しでは、場所によっては登山道を外れる危険もありそうなところ。大雪山は、ところどころこのような箇所があった。
 青紫色のホソバウルップソウや黄色のタカネシオガマとおぼしき砂礫地の花たちが変化の無い風景の中で私達を慰めてくれた。忠別岳の登りは、時には背丈を越えるハイマツの林の中の道を左右上下から突出すハイマツの太い枝をかき分けかき分け、時にはザックが引っかかって押しくら饅頭しながら押し切るようにして登るため、頂上に着く直前でバテバテ休止。








忠別岳への登りは背丈を  化雲岳の花はまさに見事だった
越えるハイマツとの格闘

このころは天気回復して来たため汗だくだ。歩き始めたら5分もしないで360度見晴らしの良い頂上に着いた。でも、雲が多く遠望は出来なかった。頂上には、20人くらい。沼の原から日帰り山行で来たという熟年ペアが何組かいた。五色岳までは、ハイマツの傍らに白い花びらのチングルマやピンクのエゾノツガザクラなどの大群落でしばし足を止めながら歩く。忠別岳避難小屋分岐あたりが、見晴らしも良く花も多かった。しかしながら、圧巻は化雲岳の花園。頂上直下の稜線に折からのガスのため遠くは見えなかったが、その花の豊かさは、足元から多くの花達が咲き競うように広がっていて、これが晴れていたらと残念でたまらなかった。ハクサンイチゲやチングルマなどが多いようだった。

トムラウシへの分岐からヒサゴ沼キャンプ地へ向かったとき、すぐ雪渓となり一部は木道もあったが、雪渓上の踏み後を辿る。ガスが濃くなり2,30mしか見えず、平塚さんが地図で角度を確認。やはり小屋を探していた数名のグループと出会ったが、このグループは地図も持っていなかったようで、中高年登山者の遭難が多いのもうなずけた。ヒサゴ沼のキャンプ地は、30テントくらい張れそうで、既に20テントはあったか。直ちにテントを張る。昨日の反省でテント内でコンロを使って夕食を作る。就寝は昨日とほぼ同じ7時半頃。

登山開始3日目:ヒサゴ沼→トムラウシ山南沼キャンプ指定地:晴れ後曇り(濃霧)
この日はトムラウシを登るが、休息がとれるようあまり長時間歩かず、歩程は約5時間と短く設定していて、少しゆっくりして出発。 最初ヒサゴ沼に沿う木道を4,5分歩き、雪渓を登る。
 このときのことであるが、そこは高度差50m程度の雪渓だったが、若干傾斜があるため、ちょうど我々の少し先をツアー会社のグループと思える10人ちょっとのパーティが先頭でピッケルでステップを切りながらゆっくり登っていく。そのため、雪渓の途中で行列が出来ていたが、私達は滑落の危険を考えて、大人しく後に従って登った。でも待っている私達のすぐ後から横に出て登っていく多くの登山者がいた。見ているとキックステップもままならないような未熟な(と思われる)人が多く、その人たちのグループリーダは平然としていた。あぶなっかしくて少し声を上げて注意したけど全く無視された。しかも雪渓上部まで来ると、地図上に示された登山道ではない左方向に向かっていくではないか?!私達の前にいた先ほどのツアーグループのリーダ(女性コンダクター)も首をかしげて仲間のコンダクタに確認している。するとツアー客の一人があちらは近道ですよ、近道を行きましょうという。即座に女性コンダクターが「私達は自然を愛する登山者です。自然を壊す勝手に作られた登山道を行くのは止めましょう」とピシッと言ってくれたではないか!!(後で聞くと旭川のツアー会社とのこと)。平気で危険を冒し、自然を壊す他県からの登山グループの情けなさと自然を守ろうとする地元ツー会社のコンダクタでした。









ヒサゴ避難小屋とトイレ  正面左側の雪渓を沢に沿って登
トイレはどこも吸い込み  るべきを途中から勝手に作った
 方式か           近道に向う登山者が多かった

稜線に出て少し登ると、眼前にこの世のものとは思えないほど美しい造形と高山植物の花園が広がっていた。そこは日本庭園と名づけられたところで、大岩石があちこちに聳え立ち、緑色のハイマツがその前後周囲を取り囲み、さらには雪渓が融けて出来た透き通る水を溜めた池が点在していた。そして足元には高山植物の花々が咲いていて、もうこれらが織り成す自然の造形美には、息を呑んだ!!!私は、こんなに美しいところは今まで見たことも聞いたこともなかった。北アルプスの雲の平や南アルプスの荒川三山の花園も遥かに及ばない!










ヒサゴ沼から雪渓を上がると   日本庭園にて
日本庭園がある           ここは夢の花園

(Y崎さんに古賀志山でこのときのことを話すと、クワンナイ川を遡行すると日本庭園の下部にたどり着き、そこはもっと美しいとのこと!どうする???これはどうしても行かなければ嘘だね!!)
    日本庭園を過ぎて、やがて北沼分岐に付く頃は、すっかり天候が崩れガスと風が出て来ていた。トムラウシ山は一旦巻いて南沼キャンプ指定地まで行った。キャンプ地には、大勢の(200人以上?と思われる)登山者がいて、さすがは100名山。
 そこからピストンでトムラウシ山に空身で登った。頂上に着いたときは、小雨さえ降ってきて、風もあり記念写真を撮った。早々にキャンプ地に戻り、強風の中テントを張る。夕食はソーメン、実にうまかった。
ラヂオで天気予報を聞く。明日は天候は悪い、雷雨の危険もあるという。計画では十勝岳に抜けるための1日目だ。いろいろ話し合い、私に若干疲れが溜まっていることもあり、十勝岳に行くのは止め、ヒサゴ沼から天人峡温泉に降りる(撤退のときの予定ルート)ことにして就寝。









トムラウシ頂上にて。     pm11時頃ガスが一旦晴れて
ガスが濃くなり霧雨状態   トムラウシ山頂が見えた。
                 下の明かりはテントの灯

登山開始後4日目:濃霧後曇り後雷雨
 2時少し前に起床。外はガスが濃い。朝食とりながら、もう一度今日の山行について話し合う。結局前夜の結論は取り消し、最初の予定通り十勝に向かうこととした。(約2時間の三川台で再確認、行っても翌朝のオプタテシケ山の雪渓が朝早くでは凍っていて危険と思われるため計画の双子池キャンプ地の2時間程度手前でテントを張ることなども考慮)。ところが行きかけて5分程のところのガレ場でガスに加えかなりの強風に。平塚さんが撤退を決断、私も依存は無く、直ちにキャンプ地に引き返す。歩きながら、もう天候の回復は見込みが薄いのでこのままトムラウシ温泉へ下りることに決定。
1時間ほどしてトラウシ公園手前あたりに来るとエゾノコザクラなどの花が一面に咲いていた。南沼キャンプ地から一緒に下山してきた若い女性2人組みとお互いに写真撮りあう。彼女らは、昨日は白雲岳避難小屋から一気に南沼まで来たという。少し荷物は小さいようだが同じテント泊で ある。やがて大岩が点在しているトムラウシ公園の登りで私が遅れ始め、先に行かれてしまった。タフだな!それとも若さか?私が弱いのか?!









 トムラウシ公園でエゾノ  後続の下山グループが
 コザクラの大群落     トムラウシ公園を登る

 

前トム平も砂礫地の高山植物の花ガ咲き乱れていた。どうやらここまでが高山植物の領域で、ここを少し下ったあたりが森林限界のようだった。
やがて雪渓の沢を下り切り、少し登り返したところで、私がバテて大休止。しかし、小雨が降り始めやむなく歩き始める。やがて本降りになり、雷雨となった。林の中ではあるが、怖さを我慢してひたすら下る。雷は去ったと思うとまたぶり返してきたりして、今日無理して十勝方面に行かなくてよかった!隠れるところも無い稜線で出会ったら、ひどい目に出会っていたかもしれない。道も平坦になる頃、ようやく雷も遠くに去ってくれた。トムラウシまでの距離の表示が出ていたが、はるかに長く感じた。枯れ木やチェーンソウで倒したままの木々が登山道を塞ぎ、それを迂回したり背を屈めてくぐったりして、これもやたらくたびれた。泥道を何度かすべって尻もちついたりしながら、ようやくトムラウシ温泉国民宿舎にたどり着いた!!!
 おりしも国民宿舎も雷のため停電となっていて、泊まることもお覚つかなかったが、やがて回復してこの日は温泉三昧、久しぶりの豪華食事を満喫した。
 翌日は、一日一本のバスに乗り、JR新得駅から富良野に出てレンタカーを借用、次回を期して十勝岳の登山口、白金温泉望岳台を確認した後は、美術館や美瑛の風景、三浦綾子記念館などめぐり予定の飛行機で帰った。

あとがき:
入山後4日目で天候悪化のため下山せざるを得なかったのは、悔しい限りでしたが、私にはもう体力の限界だったようです。それでも今回の山行は、口で言えないほどの素晴らしい大自然を見ることが出来ました。大雪山は、なんと言っても第一に登山者が少ない為でしょう、それに稜線が平なところが多いこともあって、見渡す限りに拡がる高山植物の大群落をいたるところで見ることが出来ました。その中でも、化雲山頂下の「日本庭園」と名付けられた花園は、約1kmもの間、大岩とハイマツと雪渓が溶けて出来た美しい池とが織り成す自然の造形美とあいまって、これまで見たことが無い実に美しいところでした。
しかしながら、報告で書いたように、そのまさに美しい所に勝手に作られた近道を行く登山者が多く、自然を愛する登山者が、自然を壊して平気でいる光景を目の当たりにして、心底いやな悲しい気持ちになりました。
救いは、旭川の山専門らしいツアー会社グループの女性コンダクターが近道を行きたがるツアー客に対し、自然を壊してはいけない、自分達は決められたルートを行くと毅然とした態度を取ってくれたことでした。山に入れば、それだけでも自然を壊していくことにはなるのですが、出来るだけ壊さないように努力し、影響を最小限にしたいものです。

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