山行記録:
Jiji-Odoshi Part 1・・・獅子落しの岩場のナチプロマルチピッチ新ルート?


日時:2004年9月18日(土曜)


メンバー:A藤、M本


記録(A藤)

 3連休、去年雨で登れなかった滝谷ドーム中央稜を予定していたがM本さんの都合に加え、天候不安定なのでまたまた諦めることにする。代わりに日頃気になっていた獅子落しルートの右側の岩壁が登れるかどうか、試してみようということになる。既製のルートをトポと首っ引きで登るというのはなんとなく潔く無い気がするよね、と常々M本さんといっていたので今回はいよいよ長年の願望を実行に移す時である。まあなにもかも不十分にして低レベルではあるがここ数年、人工登攀、ナチプロセットの練習も積んで来たし、どのくらい通用するのか確認の必要もあるだろう。
 10時古賀志集合。最初からトラバースが多いと予想されたのでダブルロープでA藤、10:30獅子落し取り付きの洞窟前-洞窟右端から登り始める。ここから取り付くのも初めてであり、ハーケン、ハンマー、カム、ナッツ、あぶみ、フィフィと乞食の引っ越しよろしく一切合財を身につけたうっとおしい格好なので、のぼりながらもじゃらじゃらとまとわりつき引っかかり気に障ること夥しいし、なにより重くて出だしの4級程度の登りも楽じゃないが、とりあえず落ちることなく獅子落し1ピッチ目途中へ出る。最初のカンテを乗越したあとルートを外れて右へ寄り、水平クラックにカムをセットしてさらに右トラバースの後わずかに下降してコーナークラックの取り付きでビレー。屈曲でロープの流れが悪い。
 2ピッチ目M本さんリード。このコーナークラックはキャメロット#3がフィットする。しかしコーナークラックは下がえぐれていて出だしがフットスタンスがない。あぶみでも苦労し、あれこれ試したあげく結局レイバックで登る。すぐ上に#3.5を掛け、左の立ち木にも支点をとり、更にルンゼを登る。フレンズ#3を掛け、右のカンテにホールドを捜して登り上がると、獅子落し1ピッチ目終了点の最初の杉の木の右下へでたようだ。良い支点が無いので、M本さんは杉の木へ登って私を迎える。私は出だしコーナクラックに登り上がるのに苦労し、あきらめて左のフェースでのぼるとあっさり登れた。ルンゼからカンテへ出るところはちょっと怖い。カンテから右上に登れるといいのだが支点がとれなそうなのでM本さんの判断は正解だろう。
 3ピッチ目A藤。獅子落としルート2ピッチ目出だし右のカンテ状岩稜の裏側へでるべく、垂壁を右へトラバースしようとするが支点がサビたハーケンで危ういのでハーケンを打ちたす。しかし、ここから更に垂壁の右トラバースが先が読めず何度か試みるが、つっこんでゆけば抜けきるか支点を取らない限り落ちて大きく振られるので、ここを断念。やむを得ず獅子落し2ピッチ目を3m程登り、そこから右岩稜の上へぬけ上がり、反対側の岩壁に出る。ここからまた右トラバース〜右上で、獅子落し3ピッチ目スタート地点へ裏側から抜け上がると思われる垂直のコーナークラックで始まるルンゼ起点に達する。ここでカムで支点をとってM本さんを迎える。ここまでもまた見苦しく屈曲したルート取りで極めてロープの流れが悪い。
 A藤リードの1、3ピッチとも美しくないトラバースばかりでつまらないので4ピッチ目も引き続きA藤リードとさせて貰う。キャメロット#3で最初の支点をとりまずフリー、ついでA0で上がるが体勢に余裕が無くその上のカムのセットが出来ないのでキャメロット#3にあぶみをセットしてのぼり、右壁に打たれたボロボロのリングボルトにも気休めのヌンチャクをかけたうえで、エイリアンをクラックにセット。右壁のホールドを使って身体をあげ、右壁のこれまたさび果てたRCCボルトにクリップするともくろみ通り獅子落し3ピッチ目スタート地点にでる。
 オリジナル(といっても部分部分に古い残置があるのでどういう全体のルート取りかはわからねどいつか誰かは辿った部分が多いのだろうが)ルート探しはこれで終わりにして、最後は快適な獅子落し3ピッチ目を登りたい誘惑が強く起きる。しかしせっかくここまできたのでその誘惑を断ち切って、直上する獅子落とし3ピッチ目に別れを告げて、錆びた残置にクリップしてナイフエッジカンテの右壁へトラバースする。このあたり、獅子落とし3ピッチ目をご存じの方はおわかりと思うが足許がはるか切れ落ちていて、支点もない見知らぬ所をトラバースしてゆくのは結構緊張するが、それでも先程の3ピッチ目出だしに敗退した垂壁トラバースに較べたら、何とかなる範囲に大きな手がかりがみえるので進むことができる。
 さらに木の生えた浅いルンゼ状を右上してロープを伸ばす。すでにロープの流れがわるいので落ちてもロープが木に引っかかるようにルートを取って進み、あえて支点はセットしない。獅子落とし終点のテラス脇の見覚えある枯れ木がすぐ上にみえ、終点まであと10mの緩傾斜の岩場を残すのみとなる。一気にいきたいところだが残念なことに、ロープが力ずくで引っ張ってようやく伸びる程度なのでリードは無理と判断し、岩間に生えた木にビレーをとりM本さんを迎える。出だしのカムの回収やルンゼを抜け上がった後の垂壁トラバースがかなり厳しかったらしい。
 5ピッチ目M本さんリード。出だしに古いハーケンがありここにクリップ。その上の水平クラックにカム。その上は小さな木に支点をとりのこり5mをランナウトで登って終点。セカンドで行く私もここは初めて快適な岩登りとなる。すでに2時半。5ピッチで4時間もかかった奮闘であったが、初見で未知のルートを登れたことに充実感を覚える。と同時に、こういう一手先がわからない、まったく前情報のない岩場では、なによりルートファインディングが所要時間のみならず生死をわける程の重要なキーポイントになることを痛感する。手の届く範囲のホールドで身体をあげて、その先に何があるのか?よしんば次のホールドがあったとしてもカムセットやハーケンを打ち込む体勢の余裕があるのか?無論あくまで練習ルートではあるが自分たちの力量と岩のレベルの駆け引きで、つねに緊張をしいられて登った4時間だった。
 アルパインルートといえども我々が登るところは、既製のルートであり、事前情報は多く、現場でのルートファインディングも所詮、ルートそのものというよりハーケンや残置シュリンゲのあるところを捜しているに過ぎないところが多い。今回のルートは短いとは言え殆どの区間は、ホールドを一つ一つ確かめ、自分達でナチプロをセットできるところを捜しながら登っていったわけであり、この3連休本来行く予定だった滝谷ドーム中央稜のようなゲレンデルートでは得られない経験ができたと思っている。
 このルート、Jiji-Odoshi Part 1と私達は勝手に命名した。獅子落しの脇にあり、大変怖かったルートだからである。登られていない岩はことごとくうっすうらコケと埃におおわれていて、ホールドがずるずる滑り、これを掻き落とさねばならない事頻繁なので、「コケおどしルート」なんてのも好いかと悩んだのではあるが。もう一回落ち着いてやれば一部残置ハーケンボルトを使うが基本的にはナチプロでやれそうである。そしてA0、A1はなくてもいけそうな気もするが、4ピッチ目出だしは確信はない。PART 1とした理由は、下半がトラバースが多いのと一部獅子落しルートと重複するのが気になるので、帰りがけに下見をした別な取り付き位置から、今回の4ピッチ目取り付きへ直接登り上がるルートにチャレンジし首尾良くいったらこちらを爺嚇しPart 2としたいからである。

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