[山行記録・日光 女峰山]



 

山行記録           日光 女峰山
日時:2001年6月3日(日)
メンバー:CLA藤、S藤、T田(記録)、K巣、IT(会員外)
目的:クリーンハイク および 寒沢塾山行(夏峰ルート調査)
コースタイム:滝尾神社駐車場0:30ー行者堂0:43-稚児ヶ墓1:43-黒岩4:04-箱石金剛5
:08-前女峰6:00〜6:20-女峰7:30〜8:00-帝釈山8:30-富士見峠9:22〜10:35-馬立11:35
-ゲート 12:24-志津乗越12:50-三本松14:10

記録(T田)
今回,私にとって山の会での初めての山行である.ここ数年,たいした山に行っていないため,
あまりきついところから参加するのはどのようなものか,と思いクリーンハイクだったらなんとか
迷惑をかけずにいけるだろうと考えていた.
しかしメールに載って流れてきた“前女峰を経由して昔の修験道の遺物を探す”
という計画を見てこころが揺れた.

このコースは女峰山の南にナメクジのようにべったりと伸びる尾根で,行程も長く標高差もある.
しかも夜から歩くとのこと.しかもしかも雨天決行.ひさしぶりの山なのに大丈夫なの?,
とちょっと泣き言気分でもあったが,迷った末山行の直前になってA藤さんに
お願いしてこの計画に参加させていただくことにした.

前日,大学院の授業のお手伝いということで朝6時に起きて茨城の阿字ヶ浦に行った.
海である.車を持たない私は当然,助手席であるが,乗せていただいている身分なので
居眠りなどはもってのほか.無事,授業を終えての帰途ではさすがに不安が募った.
こんなときにはとにかく緊張をきらしてはいけない,と植物園にもどってからは,
待ち合わせの時間まで眠たくならないように歩き回って過ごした.

さて当日.雲ひとつない濃紺の空である.
しんと静まり返った山では,気温も下がり,いやがおうにも光をました月が
木々の向こうから青白い光を投げかけている.
林がきれると天の川をいだいた星空がわれわれを覆い,
振り返ると街の灯りがまたたいていた.なんとも気分がよい.
ヘッドライトのひかりに浮かび上がってくる笹をかきわけてゆっくりながら確実に距離を稼ぐ.
不安なんぞはどこへやら.眠気すらない.
白樺金剛を過ぎるころから空がしらみはじめた.
夜に引き続いて空は快晴である.
陽の光は大気をあたため夜の間に冷え切った大地との間に風を生み出す.
風はとても冷たかったが,同時に気持ちを引き締めてくれる心地よさがあった.
久々の感触にいい気分になる.ちなみにこの日の朝は麓の植物園で6℃まで下がったとのこと.
日の出を迎えた黒岩の上で小さな霜柱が立っていたのが印象的だった.

その後,尾根の西側の斜面をトラバースしながら進み,ちいさな祠のある箱石金剛に5:08,到着.
予定の一時間前である.実はこの日,私が集合場所を間違えて出発を40分近く遅らせてしまった.
長い行程の日であっただけに,あぁぁぁ!という気分だったが,
この箱石金剛に至ってなんとかその遅れを取り戻してさらにお釣りがでてしまった.
これで,予定通りに前女峰の“祠”探しができるとのこと.一安心である.
まぶしい朝日を背にシャクナゲとシラビソ,コメツガの風衝林をかきわけて雲龍渓谷の絶壁にそって
ヤブをこいで鞍部へとでる.ちょっとしたヤブだが,こういう力勝負は私の得意とするところである.
しかも荷物が軽いときている.枝をかきわけ,枝を踏みつけ.ゴソゴソ,バキバキ.
もう,さっきから”ご機嫌“がとまらない.やがて大岩壁を擁する前女峰ののぼりへと進む.
前女峰の山頂に祠があるのではないかというお話しだったので,
火山灰が長年の風雨に削られてできたのであろう特異な地形を右手に見下ろしながら
山頂めざして息をきらしてゆく.ところが,祠は途中にあったらしいのだ.
これはあとで女峰の頂上で合流した,高村会長に聞いた話である.誰もみつけることができない,
というのは最悪だが,自分が見られず他人が見られた,というのはやっぱり残念である.
しかしS藤さんが祠の代わり,とても珍しい(はずの)八重咲きのコイチゲをみつけた.
余談ではあるが,自然界に八重咲きは存在できない.
というのは,八重咲きの花というものは,おしべが花びらにかわり,
めしべがガクになってできるものなのだ.
だから,生殖器官ができず,このために種子によって子孫をのこすことができないのだ.
つまり本来はいないはずものを見てしまったことになる.
なんだかえらく得をした気分でたくさん写真に収めてしまった.

さて,そんなこんなで30分ほど登って前女峰の山頂に到達.
展望の利く気持ちのよいピークであった.
のぼりつめるとまずは祠を探す.
転がって落っこちたのではないかと山頂をぐるりと一周する.
がもちろんみつからない.あきらめるとその後はひるね(あさね?).
初夏の晴れ空の太陽はたかいところまで上って日差しを強めていたが,
風は相変わらず冷たく快適である.出発までゆっくりと過ごした.きてよかった.
 
前女峰から直接,女峰へと登ることにしてふたたびシャクナゲと針葉樹の林へと入る.
S藤さんと「飯豊に行きたいですねぇ」と話しながら歩いていく.
鞍部を過ぎてからしばらくしてS藤さんがまたしても“いいもの”をみつけた.
行者ニンニクである.それも大きな群落!S藤さんをまねて生でかじってみるとまさしくニンニクの辛さ.
みんな,袋一杯に採った.ついでに付近に流れ落ちていたごみも若干採った.(えらい!?)ところで,
獲物は帰ってから教えていただいたとおり豚肉と一緒にいためてたべた.
とても美味でした!さて,山菜採りをたんのうすると,
ヤブのうるさい尾根をさけて行者ニンニクの生えていたガレ場を上ることにした.
落石に気をつけながら一歩一歩,慎重に足を進める.やがて林を抜けて山頂へ.
今朝,気温が下がったことが幸いして初夏には似つかわしくないすばらしい展望である.
ハイマツの向こうには苗場,谷川,尾瀬の山々,妙高,果ては富士山,
南アルプス,北アルプスまでが一望できた.
これは快感である.標識のあるピークまで上って昨日からあがっていたT会長,A山隊と合流した.

女峰の山頂からは帝釈山へと向かう.あたたかくのんびりとした稜線歩きとなる.
変わったことといえば,S藤さんが高級タオルを手に入れたこと,
帝釈山の山頂でベニヤ板が空を舞っていたこと….

帝釈山からシラビソのうっそうと茂った林の中を一時間ほどくだって富士見峠にでる.
ここで一時間にわたる大休止をとった.お昼御飯である.
A藤さんたちにお味噌汁にジフィーズの御飯,お餅までゴチソウになってしまった.
そして,デザートはダケカンバの樹液.うまれて初めて飲んだのだが,
ほのかな甘みがとても上品で美味しい!帰って調べてみると,
この樹液はブドウ糖,果糖,アミノ酸を主成分しているのだそうだ.まさしく天然のジュースである.

この後はてれてれとゴミを拾いながらの林道歩きが続く.
お日さまはすっかりあがって6月の陽気をじりじりと照りつけてくる.
しかしこういう空気は嫌いではない.太陽のエネルギーが空気という空気に充満しているように
感じてなんだか元気がでるのだ.途中,A藤さんに宇老山のお話しや,寒沢塾のお話しお聞きながら歩く.
また,秋に日光ナギ巡りをしようということで盛り上がった.え,ナギを登るの!?と一瞬戸惑ってしまうが,
A藤さんと話しているととても面白そうな気がしてくるので不思議である.
これがA藤さんの山に対する情熱から発したオーラなのだろう,
とひとりで納得した.これからが本当に楽しみである.フフフ.

黒曜石を探しながら歩いていくとやがてS石さんやT橋さんの車が置いてある馬立についた.
ここでゴミを車の横に置手紙と共にザンチして彼らに託すと,
身も心も軽くなって出発.あとはゲートの脇のK巣号へと向かうのみであった.
が,結局そのずっと先の三本松まで歩いてしまった.
実は,K巣号の鍵が滝尾神社に止めてあるA藤さんの車の中で眠っていたのだ.
真夜中から歩く酔狂なパーティーなのでいまさら何があっても驚かない.
まあ,これも一興,と,すたこら歩く.途中,一人歩きのお兄さんと激しく,
無言のデットヒートを繰り広げながら最後は早足で三本松にゴールイン.
車の鍵を起こしに行くため,一足先に日光へ向かったA藤さんとK巣さんを見送ると,
ITさんとふたりでソフトクリイムをなめて一息ついた.空は相変わらずよくはれていた.
おしまい

 

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