賢治忌によせて
2006/09/21 水仙月
台風が残した空が
あんまり華やかでまばゆいので
もしかしたら この空のどこかで
あのかたが笑ってやしないかと
いつまでも いつまでも 空を見上げている
永久で透明な生物の群が棲むというglass blueの青空 西の空にわいている黒雲は
たしかに 洪積世の森林から立ち昇った水けむりだ
賢治が「もうほめるひまなどない」と形容した
雲や風や光の宇宙を
百年の年月を経ても こうして感じることができる
そしてすこしだけ賢治とはなしができたような気がする
そらの微塵にちらばることを希求した君は
四次元世界に溶けてゆき
私はといえば
やり場所の無い瞳を
あの雲に投げるしかない
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