24.湯西川の高土山1128m・高山1220mへ単独行


期間:2002・3・17    天候:快晴  単独行  地図:五十里湖
目的:残雪の栃木の山巡り
コースタイム:一ツ石登山口8:00−鉄塔8:30−高土山9:10-9:20−1200mピーク10:20-10:30−1220mピーク(高山)11:30-11:50−1200mピーク(高山)12:30-12:40-高土山13:30-13:40−一ツ石登山口14:30


山行記録:今年の残雪は、例年になく少ない。残雪期を、県北の藪山登山と考えていた私には、何か尻を叩かれているような気がして、気がせかされてならない。
今日は湯西川温泉の、5キロ程手前にある高土山を目指した。25000の地図、五十里湖には、11山が記載されているが、今回で4山目であった。
高土山の取り付き地点は、一つ石の2キロ手前で、マゴリ沢東に、北へ張り出した尾根、と考えていた。中間地点には、送電線の鉄塔が建っているので、貴重な目標になっていた。ここへは、200m程の登りとなっていた。林道ゲート前に駐車し、支度を急いだ。
雪の斜面に取り付いた。木には、大小にかかわらずナンバーの記した青いテープが巻かれていた。いよいよ工事着工になった、湯西川ダムでの補償の調査標の模様であった。先ほど通過してきた赤下集落も、この登山口も、やがてはダムの底へと、消えてしまう運命となっていたのだ。少し登ると、しっかりした鉄塔への巡視路が合流して来た。何だこの道を利用するべきだったかと、それからはこの僅かに雪が残った、巡視路を登って行った。
鉄塔へは、30分で到着し、休憩とした。北には、先週登った横瀬山が、湯西川を挟んで競りあがって来た。西には、栗山沢の向こうに、明神ヶ岳が素晴らしい。残雪が太陽の光に輝いて眩しく、栗山沢を囲んで、半円状に峰々が競っている。益々この山への登山意欲がそそられてしまう。
鉄塔よりの尾根は、西側に桧の樹林帯が続き、東側は葉のない広葉樹林帯となっていた。
私は雪量の少ない桧側を登って行く。誰もいない山には、踏み跡もなく、私のスパイク長靴だけがトレースをつけて行った。200mも登ると、雪も膝近くの量になって来た。靴がズボン、ズボンと潜って、体力を消耗してしまう。ここでワカンを装着し、さらに登って行った。
やがて、赤下より尾根が合流し、勾配も緩くなった。一つ目のピークが近くなって来た。向きを南に変えると、今度は背丈を越える、猛烈な笹薮が待っていた。暖冬の今年は、残雪を利用しての登山期間も、短くなっている。少しでも楽をしようと、残雪部を進んで行くと、雑木に囲まれたピークに到着した。この時は確信が持てなくて、高土山頂とは思わなかった。それは、山頂までの登山タイム、3時間と想定していただけに、ここではないのでは、との思い込みが強すぎたからだった。
ここよりも高いピークが南に見え、あれが高土山であろうと、その時は思えた。未だ時間は9時である。とにかく行ってみることにした。一応タイムリミットを12時とすれば、今日の天候を考え合わせると問題ないだろう。
100mも行くと、小さなピークで、ここはシャクナゲが密生して、先を閉ざしていた。これを強引に掻き分けて進むと、一気に50mの下りが待っていた。ここは南斜面であり、2m以上の笹薮で目の前は完全に塞がれていた。ここで戻ろうと、弱気の虫が頭を持ち上げてきたが、とにかく、両手で掻き分け、掻き分け強引に進んだ。幸いにも、今は下り坂である、帰りは登りとなるので、きっとつらいはずだから、余力を残しての帰路にしたいものである。
尾根の細いコルに降り立った。先人のものか、獣道なのか、薄い踏み跡が続いていた。ここからは、150m程の登り返しとなった。少し登ると、大きな岩が行く手に現れた。左右とも一気に落ちる雪の急斜面である。ピッケルを突き立て、木や、木の根を掴みつつ、慎重にこれを登りきった。細長いピークのさらに先の南にもピークが見えた。ここで地図を確認し、やっと最初のピークが高土山であったことが判明出来た。
三角点ピークはここより東に見えるピークで、標高1220m、今回のルートでの最高峰でもあった。ここまでくれば、このピークに立たねばならないと思った。一度下る南斜面はまたも、背丈を越えた笹薮との戦いとなった。もう弱気の虫は起きなかった。最後の残雪の斜面を耐え登って、紅白の古いポールが二本も立った1220mピークに着いた。
ここには、小さな山名板が木に取り付いていた。高山と記されていて、この三角点ピークをそう呼ぶことを初めて知った。ザックを投げ出し、三角点標石を捜そうと、ピッケルで雪を掘ってみたが見つからなかった。快晴の今日は展望も申し分なかった。東の葛老山、北に高瀬山と、横瀬山が高土山を前衛にしていた。さらに遠く見えるのは、荒海山に台倉高山だろう。西には明神ヶ岳が素晴らしい。南の日光連山は、白い屏風の如く連なっていた。予定外のピークに立って、さらにこの予想外の展望に酔いしれた。この頂きに立てたのは怪我の功名と言うべきものであったが。
時間は、瞬く間に過ぎ去った。満足感を腹一杯にして帰路についた。一度下って、さらに登り返し、1200mピークで一息いれる。ここからの下り、特に大岩部分の滑落が要注意であった。さらに最後の難関が猛烈な笹薮の登りであった。
必死の登りで、これを終了し、高土山に再びたった。しかしここは展望のないピークなのでさっさと歩き続け、鉄塔下に到着して休憩をとった。
再度、明神ヶ岳と横瀬山、高瀬山をカメラに収め車に戻った。
温泉の湯船にのんびりと浸かっていると、高土山での記録写真を忘れたのに気がついた。結局、春分の日にここを再登したが、益々雪は残り少なく、歩きにくい藪の山がさらにひどくなっていた。

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