22.残雪の高瀬山   1276.4m


期間:2002.3.3   天候:快晴  単独行  地図:五十里湖
メンバー:鈴木 隆 単独行 目的:残雪の栃木、山巡り
コースタイム:宇都宮:7:30―-登山口9:10−930m尾根平坦地10:00−1222mピーク10:55-11:00−高瀬山頂11:45-12:10−登山口13:20


山行記録:我家には、私より早起きがいて、賑やかな居間となっている。ロシアンブルーの美人猫(もう直ぐ1歳)と将来の登山パートナーと思っているビーグル犬(生後2ヶ月)である。
私が居間に降りて行くと、早速朝食のおねだりがあり、先ずはこれに応えねばならない。それからが、私の朝食となる。ラジオ栃木では、長寿万歳が始まった。私への「登山について」のインタビュー15分番組(来週との2回)だった。自分の声をラジオより聴いたのは、初めての体験で何とも面はゆいことだ。
今年の私の登山目標は、栃木の山々の完登である。ちょっと欲張りであるが、25000分の地図には275座もあるが、今日現在、170座しか未だ登っていない。1月からでは、再登も含め58座を登っているが、何せ1日6座も登れる低山探訪が多く、本格的な山は1座もない状況では、完登は自信がもてないが・・・。道のない藪山も多く、これらは出来るだけ残雪利用を心がけて行きたい。
その一つが、今日登る高瀬山である。五十里湖の海尻橋より西北に見える二つのピークを持つ山で、実にゆったりとした美形を保っている。
野岩鉄道の湯西川温泉駅を過ぎると、10分程で県営湯西川発電所が眼下に見える。ここが登山口である。近くの路肩に駐車し山支度を整えた。
湯西川を吊り橋で渡ると、ここが発電所、海抜600m地点である。東電の鉄塔巡視路が、左右に分かれている。私は右折し、これを辿った。道はつずら折りとなって、高度を上げていく。やや水平に変化した地点で、私は枯葉を踏みしめ、尾根を目指した。なかなかの急登で、330mを一気に稼いで行く。ピッケルを突き立て登り続けた。木の葉のないブナ、ミズナラ、クリ等の林の中では、高度を増すごとに視界が広がって行った。背後には、昨日登った葛老山、その右に今月中に登ろうと計画している高土山が残雪を留めた北斜面を見せてきた。五十里湖は、緑の水を湛えている。その中央を会津へ向かう電車が走り抜けていく。その隣りには、新たに国道が建設中であった。やがて右手より尾根が競りあがり合流すると、ここが平坦地となっていた。先ずは一息を入れた。
今までは、南斜面のため残雪は無かったが、高度が上がると徐々に腐った雪が多くなってきた。雪を避けつつ登り進むと、背後には鶏頂山のピラミダルなピークが顔を覗かせてきた。ここはだだっ広い尾根で、先人達が残してくれた赤テープが、所々の小木に巻かれて
いた
急登が終わると、ここが1222mの少し手前であった。残雪が多いのでここでワカンを装着した。
10時55分、1222mピークに到着した。誰もいない山には、風が梢を揺らし、頬を冷やすだけであった。
ここからの稜線歩きは、快適そのものであった。雪面には、1週間は経過したと思える一人の足跡が微かに残っていた。私の熊避け鈴の音は、リズミカルに山々に溶け込んでいった。
稜線は一旦下った後、北へとさらに伸びていく。残雪は固くしまって実に歩き易い。さらに次のピークを越えていく。次のピークが山頂のようである。東面は雪がきれ落ちて危険で、私は出来るだけ西側を歩き進んだ。西前方には、県境の山並みが白く続いて、昨秋登った帝釈山から台倉高山が美しく確認できた。
今日は春を思わせる暖かい日差しが届き、実に快適な山歩きとなっていた。
30分も歩いたら、前方に大きな岩が現れた。これを左手より登り切って、さらに進んで行くと、わずかに高くなったピーク、ここが高瀬山頂であった。11時45分到着。
測量用の紅白のポールが立ち、三角点標石が僅かに雪から顔を覗かせていた。私は、ピッケルでさらに雪を取り除いてやった。木には、小さな山名板がぶら下がっていた。3時間を覚悟していただけにラッキーだった。
ザックを下ろしカメラを構えた。周囲の山並みの中では、とりわけ白根山から太郎山、そして女峰山へ続く日光連山の後姿が美しく眺めることが出来た。
誰もいない頂で、一人おにぎりを頬張り、温かいお茶を飲んだ。山は静寂の中にあり、素晴らしい頂を私だけが味わっている、この贅沢さ。一人だけという寂しさよりもこの満足感、充実感がたまらなくうれしい。
あっという間に時が過ぎていく。もう一度日光の山、高原の山、那須、そして日留賀岳と大佐飛山。さらに県境の山並みを眺めまわして、帰路についた。
1222mピークまでは快適な残雪の稜線歩き。さらに歩き続けた後、ワカンをぬいだ。
次の930m地点までが最も注意を要する下山路である。赤テープと正面の鶏頂山を目印に一気に下りきった。一息を入れた後、さらに今度は右へと向きを変え、枯葉の中を下って行った。湯西川発電所の吊り橋を渡り切り13時20分、登山口へ到着し、今年の中では一番満足出来た山行を無事終了した。

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