36.安易な判断・迷い道・・高倉山(湯西川)    1437.2m


期間:2002.6・16   天候:曇り後晴れ  単独行  地図:湯西川.川俣湖
コースタイム:土呂部牧場9:05−前倉山10:05−10:15−高倉山10:55−11:15−前倉山12:00−12:15−土呂部牧場16:30


山行記録:先週は以前よりの憧れでもあった群馬との県境にある錫ヶ岳へ、日光湯元温泉から前白根山、白根隠、白桧岳と縦走し、錫ノ水場で幕営した単独行は、久し振りに身も心も引き締まったような山行だった。昨日は土曜なのに仕事で山へ入れず、今日は思い切り汗を絞り出そうと、少々藪漕ぎを覚悟して、栗山北部の前倉山から高倉山へと登る。
栗山村、野門から湯西川へと車を走らせ、土呂部集落の北の土呂部牧場近くに駐車した。
昨夜、この辺には夕立があったらしく、草も木も雨に濡れ、沢の水は激しく音を立てて流れていた。
牧場の柵に沿った踏み跡を辿って登り始めた。少し登った後、失礼して牧場の中央を行く車道を歩く事にした。やはり濡れるのは嫌だからと、拾い歩きをしつつ登って行く。20分も行くと、牧草も長く伸び、車道も消えた。たちまちにして、ズボンは濡れてしまった。気温も高いので、私はかまわず歩き続けた。
左に尾根へと続く支尾根が見えたので、柵を出てこれを登る。それ程厳しい藪もなく、尾根には程なく到着し、休まずこれを登り続けて行った。獣道とも思える微かな踏み跡が続き、私はこれを辿って前倉山を目指した。
木の生い茂る尾根からは、先ほどの牧場が徐々に見えなくなってきたが、前倉山頂近くまで牧場は伸びていた。広かった尾根も狭く変化し、笹も膝以下だった。登り始めて約1時間後、前倉山頂1398mに到着した。ここは樹林に囲まれ、東西に広く長い山頂で、これを霧が包み込んでいた。群馬県、山岳部の名入りの山名板が木に打ち付けられていた。一息入れ、記念のシャッターを押して北東の尾根へと山頂を下った。
周囲が霧に包まれ、視界は20m程しかないが、かえって狭い尾根の方が進み易く、踏み跡もしっかりついていた。登りかえして辿り着いたピークは前倉山よりも標高が高い。ここで進行方向を左に折れ、北へと伸びる尾根を下って行く。帰路のポイントとなる地点であり、要注意であった。良く周囲を確認してから、この尾根を下った。
ここからは、さらに尾根も狭くなり、さらに両側は切れ込んでいる。次のピークへの登りが最も藪がきつく、背丈を越えたスズタケが完全に私の前方を塞いでいた。わずかな隙間のような獣道へと、藪を掻き分け、これを掴みつつ自分の体を上へ上へと持ち上げて行った。
さらに進むと、前方の霧の中に、小高いピークが見えた。これの登りに耐え登ると、ここには登頂記念のプレートがあった。しかし三角点標石もなく、標高も約1400mで、前倉山からも近すぎ、高倉山頂とは信じられない。時間も11時前なので、とにかく先へ進むことにした。一旦下りさらに登り返した次のピークは、なだらかで東西に長い。確認のため一応西の端まで歩いていったが、三角点標石はなく、どうやらここは違うようだ。北は胸まで伸びたネマガリタケの笹原だったので、どこが尾根なのか不安だった。うろうろしていると、わずかに霧が流れ、北にここよりも高そうな、ピークへ続く尾根が見えてきた。これだろうと、笹原へと突入して行った。
やがて辿り着いた尾根、今までの笹原と変わり、雑木が密に生えた急登であったが、木を掴み、木の根をも掴みつつさらに登って行った。それでも藪の中よりは、この尾根の方が登り易かった。大きな岩は左に巻いてさらに登る。尾根には石楠花も密生してきた。これはなかなか厄介であった。そんな中、木の根元にポッカリとした大きな穴が口を開けていた。どうやら熊さんの棲家らしい。何とも薄気味悪く、ザックの鈴の音を一際高く鳴らして、少し様子をみてみた。何の変化もなかった。思わず胸を撫で下ろし再び登り出した。
10時55分、狭いピークに到着した。ここにはコメツガ等の高木が疎らに立ち、その根元には石楠花やツツジ等が密生していた。三角点標石は捜してみたがみつからなかった。頂を霧が包み込んでいたが、周囲は急激に高度を落としていた。ここよりも高いピークは見えず、地図で確認すると山頂に間違いない。周囲を再度眺め廻すと、RKと記した小さな高倉山の山名板が木に吊るされていた。やっぱりここが高倉山頂だった。ザックからカメラを取り出し、記念のシャッターを押した。腰を降ろしておにぎりを食べる。
晴れていれば、東に明神ヶ岳が美しく眺められるだろうが、今は周囲を霧が取り巻き、展望は全くなかった。時たま東の麓から、林道を走る車のエンジン音だけが、聞こえてくるだけだった。
20分後、山頂を下った。特に方向を確認しつつ、45分で前倉山に戻って休憩とした。
前倉山からの下山、ここからが失敗の始まりであった。安易にこの尾根だと決めて、一気に下った。少し違うと感じたが、降りてからの移動はさして時間もかからないだろうと、そのまま下り続けた。
降り立った林道は地図に記載されてなく、そのまま歩き続けると、蕗を採っている、地元のおばさんがいた。「土呂部の方向はこちらですか?」と問うと、こっくりとうなずいた。私はこれを鵜呑みにしてアスファルト道路を下った。
1時間以上も下って、どうも変だと思い道端に設置してある地形図を覗きこんでやっと方向の誤りを確認した。何と正反対の、湯西川温泉へと歩き続けて来ていたのだ。あのおばさんは耳が遠かったので、ただうなずいただけなのだろうか?
再度、道路を登り返して土呂部牧場についたのは既に16時30分、登り1時間の前倉山が、下り4時間30分もかかっていた。日の長い6月だったからとはいえ、私としたことが安易な判断ミスを犯してしまい、バカに長くかかった、日帰り失敗山行となってしまった。あーぁ、とにかく疲れた。

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