10〜12.静寂の県境縦走を楽しむ・宿堂坊山〜三俣山〜黒檜岳


宿堂坊山1968m三俣山1980.2mシゲト山1835m黒檜岳1976m
期間:2001年11月24日〜11月25日  天候:2日間共快晴
メンバー:CL大塚.SL白石.西脇.松本.斎藤.鈴木隆地図:中禅寺湖.男体山.皇海山.丸沼


山行記録:
(11月24日)コースタイム 宇都宮4:30−菖蒲ヶ浜5:50−千手ヶ浜7:20−
ネギト沢林道分岐9:15−ネギト沢林道終点12:00-12:30−
2077mピーク13:30-13:45−1991mピーク14:45−
ネギト沢ノコル15:10幕営
群馬県との県境において、白根山の南、錫ヶ岳と皇海山との中間点に位置する、宿堂坊山
から三俣山迄は、足を踏み込むのも中々勇気が入りそうな寂しい県境であろう。
今回、大塚さんに誘われて、久し振りに山の会の定例山行へ参加した。
朝未だ暗い空にはオリオン座が輝き、今日の快晴を示していた。白石さんの車に乗り、一
路日光を目指した。到着した菖蒲ヶ浜はやはり寒く、フリーズを着て靴紐を結んだ。
中禅寺湖の西岸に沿った道には、ミズナラ等の落ち葉が重なり、これを霜柱が持ち上げて
いた。私達はこれをガサガサと踏み進んだ。前方の黒檜岳に朝日が当り、赤岩の手前で日 の出を迎えた。湖には波がキラキラと眩しく踊っていた。
千手ヶ浜に7時到着。予定ではここまでバス利用であったが、早朝発は既に運休となって
いた。朝霧が湖面より舞上がり、バックの男体山は朝日の中に大きく聳えていた。
休憩の後、私達は広い車道を、山の話を交わしつつアザミ橋へ進んだ。
柳沢に沿った林道を進むと、目の前に宿堂坊山に続く尾根が迫り、右手に大岳が真近い。
白石さんよりこれ等の山の直登尾根取り付き地点を教えて頂いた。
9時15分到着したネギト沢林道分岐点は、沢水に橋は跡形もなく流され、既にその役を
失っていた。川岸の木に赤テープが巻かれていたので、これに従って川底に降りると、ニ
本の小木が渡してあった。
荒れた林道を歩いて行く。かつてこの林道は何程の木材を運び出したのだろうか?ひょっ
として自然を破壊しただけなのではなかったろうか?と思いたくなる程、道は荒れるがま
ま、沢水に何ヶ所も分断され、草木や笹が道を覆っていた。その中を獣道とも思える様な、
細い一本の踏み跡が続いていた。
途中、湧水にて喉を潤し、休憩を取る。この時期は未だ降雪も少なく、北斜面にわずかに白く残雪があるだけだ。
かなり歩いた後、ヘアピンカーブを繰り返した先に到着した草原。ここには無人雨量計が設置してあった。ここを林道終点と思ってしまったが、終点はもっと先で、5時間近くかかった12時、やっと到着した。うんざりする様な林道歩きであった。
正面には錫ヶ岳が聳え、後方には太郎山、小真名子山、大真名子山が美しく見えた。ここで各々昼食を取ったが、斎藤さんはふかしたサツマイモ3個だけが2日分の行動食。これで充分とは、仙人の仙人たる所以であろう。
ここで大塚リーダーより今日の幕営地を宿堂坊山手前の、ネギト沢ノコルに変更したいと提案され、全員賛成する。何せ予定のタルワキ沢ノコルは三俣山のすぐ手前で、私は死んでしまいそうな遠くに思えたからだ。
いよいよ藪山の本番、と覚悟しつつ登り始めた。大塚さんが、地図とコンパスを手に先頭を行く。続いて白石さん、私と続いた。赤テープや赤布等が木々に巻かれ、薄い踏み跡が続いていた。そんなに迷う事はなさそうな気がした。
尾根よりは、谷の向こうに宿堂坊山が望見出来たが、既に私達の後方になって、同じ様な高さになっていた。樹林越しに見える錫ヶ岳は、ますます近くなって大きく迫った。
県境の尾根に飛び出したが、ここは三林班沢の頭、2077mピークの100m北の斜面だった。注意しないと、つい斜面を下って反対方向の、錫ヶ岳へ歩きたくなる地形だった。
林道終点より1時間後、2077mピークに到着した。振り返った錫ヶ岳は、東面の緑の斜面に比べ、西面は急峻な岩場になっていて、その先には一度は訪れたくなる様な、美しい笠ヶ岳への稜線が伸びていた。さらに後方の白根山には白雪がわずかしかなかった。
南には皇海山が大きくなり、西には遠く苗場山、谷川岳、至仏山が白く輝き、手前には武尊山が望めた。今日の幕営地は宿堂坊山の手前となったが、未だ2時間以上歩かねばならない。県境の踏み跡は、樹林の中であったが、今まで以上にしっかりした踏み跡で、赤テープや標識もあって心強い限りであり、全員元気だった。やはり単調な林道歩きよりも、山を歩く爽快感があるからだろう。
次のピーク1991mネギト沢ノ頭へは、1時間を要した。ここからは下りしか残ってな
い。ドンドン下って行ったが、広い尾根は道を見失い易い。幸い進行方向である宿堂坊山
が樹林越しに見えるので、方向調整は簡単だった。しかし雨中での単独行は要注意の下り
だった。
ネギトノコルが近づくと、最適地には、先客のテントが既に張られていた。私達は手前の
平地にテント2張りを張ることにした。一息を入れて、白石さんと2人で水汲みに出発し
た。水場は北へ7分程下った、ネギト沢の源流だった。
下って行くと、若者が一人登って来るではないか。明智平より一泊し、白根の五色沼を目
指しているとの事。何か狐につままれた様な、突然の若者出現だった。
やはり6人の食事は楽しく、そして美味しいものだった。炊事担当の西脇さんが鶏肉入り
のシチューを作り、斎藤さんと松本さんがご飯を炊いた。私は白石さんが担ぎ上げたビー
ルを飲みつつ、これを待った。さらには、ワインに秋山さんの差し入れの日本酒とアルコ
ールは豊富で、つい飲みすぎの夜となっていた。
(11月25日)
コースタイム:ネギト沢ノコル5:50−宿堂坊山6:10−タルワキ沢ノコル7:10−
三俣山8:15-8:40−シゲト山10:25-10:55−黒檜岳12:40-13:20−
千手ヶ浜14:45-15:00―菖蒲ヶ浜16:45(温泉入浴)−宇都宮18:30
4時起床する。山の上はやはり寒かったが、空には星が輝き、今日も快晴である。予報は
午後の崩れを言っていたが、そんな予感はしなかった。シャブシャブ風の黄な粉餅の朝食
を取り5時50分出発。テントの先客に挨拶をし、白石さんをトップに登り始めた。彼の
ランプは私の4倍は明るく、樹林の中、登山標識や、微かな踏み跡を的確に捉えていた。
今日は長丁場の行程であるが、朝一番の急登は体がなじまず結構きつい。直ぐ息は乱れ、
汗が噴出した。しかし山頂には20分で到着。ここよりは朝焼けの空が見えたが、樹林の
頂で、山名板が木に幾つもあって、中央に三角点標石が置かれていた。斎藤さんに全員の
記念写真を撮って頂いた。
余り休むと体が冷えてしまう。次の山、三俣山を目指し、松本さん、斎藤さんの順で県境
尾根を南下する。快調な2人に遅れない様、一気の下りについて行った。やがて日の出を
迎えた。中禅寺湖は意外と近く、手前には西ノ湖が、静かに緑の水を湛えていた。
樹林の中、さらに笹の中を進むが、意外に藪はなく、歩き易い。しっかりした踏み跡と、
数多くの赤テープや標識があって、道に迷う事はなさそうだ。やせた尾根を下り、登り返
した所がヤジの頭、当初幕営予定のタルワキ沢ノコルは、さらに先で宿堂坊山より1時間
の距離だった。ここは快適そうな森と笹の中のテント場で、水場は5分程東へ下った所と
なっていた。
休憩の後、三俣山の登りにかかった。先行する2人はますます快調で、離れないように頑
張っても、私の足は思う様に上がってくれなかった。
1時間後、シゲト山、黒檜岳への分岐点に到着し、陽だまりにザックを置き、その先5分
程の三俣山頂に立った。
ここよりの展望、特に西方は素晴らしく、さらに大きくなった皇海山の右には八ヶ岳連峰。
さらに白銀に輝く北アルプスの槍、穂高が望め、苗場、谷川、武尊山と、全員で指呼しな
がら、飽きもせず眺めていた。三角点標石は中央の小笹の中に隠れる様にあった。ここが
スタート地点より最も遠い地点で、ここからが帰路の山行となる。ザックのデポ地点に戻
ったが、ここの樹木は立ち枯れが痛々しい限りであった。良く見れば、そのほとんどが鹿
に樹皮を食べられ、立ち枯れてしまったものであった。
たっぷりと休憩を取った後、ここから私がトップでシゲト山を目指した。今回の山行の中
で、最も気になっていた稜線であった。来年にでも松木沢より三俣、黒檜、大平山へと縦
走したいと思っていたので、是非自分の目で的確に稜線を辿りたいと考えていたからだ。
今までのうるさいくらいの赤テープや標識は激減し、踏み跡も薄くなってきた。特にピー
クを下る時の広い稜線では、視線をあっちこっちさせて、赤テープや踏み跡を忠実に辿っ
て行った。
全体的に、稜線の南は急斜面となっていたので、快晴の今日はコンパスを使わずに進んだ。
歩き続け、1980mピークにて小休止。ここは笹の小さなピークで、松木の谷の向こう
に、鋸山が荒々しく、庚申山の右には白く富士山が顔を見せていた。
ここで後続していた2人パーティが先へ進んだ。(その後、彼等とは黒檜岳まで前後しつつ
歩き続けた。)
一旦下った後、登り返したピークが、1928mピークである。休まずシゲト山へ下って
行く。ここは1835mで、稜線がほぼ直角に向きを変え、縦走のポイントとなるが、単
なるコブの様な低いピークである。今日は朝からずーつと、鹿の糞を踏み続けて来た様な
気がした。そんな稜線の道だった。
やっと辿り着いたシゲト山は、何とも寂しい樹林の中で、頂上を示す標識が無ければ、気
付かずに通り過ぎてしまいそうな平坦地であった。特に黒檜岳から三俣山へ向かう時は、
南の尾根に進み易く、要注意の地形である。
南斜面の陽だまりの笹に腰を下ろし、行動食を取った。谷越えに見える備前楯山や、大平
山をゆったりと眺めた。ここからは車のある菖蒲ヶ浜まで3時間半もあれば到着出来る。
今は未だ10時半、ついついのんびりしての山談議となっていた。そして30分は瞬く間
に過ぎていた。
シゲト山へは、先週も妻や町内の人達と、菖蒲ヶ浜から黒檜岳を経由してのピストンをし
ていたので、ここからはトップを譲って、私は最後尾となってシゲト山を下った。
さらに登り返した1919mピーク、ここより黒檜岳へはほぼ直角に向きを変えるが、西
ノ湖へ緩く落ちて行く尾根の方が立派で、おまけに誤った赤テープもあって、迷い込む踏
み跡もしっかりと付いていた。私達もうっかりしてこれを辿ってしまい、10分程のロス
をしてしまった。
ここからは、斎藤さんがトップになった。まるで糸の切れた凧の如く、あっと言う間に視
界から消えた。
ほぼ登り返した黒檜岳の肩に展望の良い地点があり、斎藤さんはここで待っていた。ここ
からは、特に錫ヶ岳がピラミダルな山容となって美しい。さらにその奥には白根山が控え
ていた。
黒檜岳の頂上も、標識が無ければどこが頂上か判らない様な、樹林の平坦地である。そし
て一人の時には特に寂し過ぎる頂でもあった。ここより社山への道が分岐している。
6人パーティでのコーヒーブレイク、これは楽しく賑やかである。笑い声と共に、コーヒ
ーの香りが樹林の中へ漂っていった。
黒檜岳よりは、一気の下り、トップの松本さんがどうして腰の痛い人だなんて理解出来な
い程、猛スピードで下って行った。私の膝は直ぐ泣き出してしまいそうだ。途中より西脇
さんがトップに変わって、どうにかついて行けた。
降り立った中禅寺湖畔。ここにはかつて勝道上人ゆかりの千手堂があったそうだが、今は
石段と礎石が残っているだけであった。千手ヶ浜には夕日が残り、寄せては返す波の調べ
が心地良く耳に届いた。かなりハードであった今回の山行も残り1時間半、安堵感と共に
のんびり湖水を眺めることが出来た。
菖蒲ヶ浜には16時15分到着した。温泉は幸ノ湖荘でお世話になったが、硫黄の湯船は
他に人はなく、ゆったりと手足を伸ばして大満足、極楽だった。こんな素晴らしい山行を
企画し、リードしてくれた大塚さんを初め、パーティの皆さんに心からお礼申し上げます。

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