29.イワウチワに魅せられた芝草山   1341.6m


期間:2002・4・13   天候:晴れ  単独行   地図:荒海山.五十里湖
コースタイム:中ノ沢分岐点登山口8:20−鉄塔下8:50−8:55−大岩9:20−9:30−芝草山頂9:55−10:25−大岩10:45−鉄塔下11:10−11:20−中ノ沢分岐点登山口11:35


山行記録:先週、日向倉山に登り入山沢越えに芝草山を望んだ。その時来週は是非あの山に登ろうと思った。この芝草山は、以前より中三依の男鹿の湯船から何度も目にして、そのピラミッドの如く聳える秀峰に何時の日にか登りたいと思ってはいたが、その当時はその山の名前すら知らなかった。
中三依より入山沢を遡り、中ノ沢を渡る橋の手前、広い路肩に駐車した。尾根を登ろうとすると、ここには送電線の鉄塔への巡視路があって、私はこれを辿って8時20分出発した。
つずら折りに尾根を行くと、30分後鉄塔の下に到着した。入山沢の南には、滝向山、白倉山そして先週登った日向倉山が望めた。谷筋には残雪があるものの、その量はかなり少ない。
巡視路はやがて次の鉄塔の立つ尾根へと、山腹をトラバースして尾根を離れて行く。尾根を直進する踏み後は意外と踏み込まれ、山行の心強い味方になりそうである。
西側より尾根が合流してきた。ここにも人の踏み跡が登ってきていた。下山の時の注意すべきポイントであり、周囲の風景を良く眼に焼き付ける。尾根の勾配がやや緩くなって、そしてその先に大きな岩が立ちはだかった。
大岩を左に回り込むと、次の岩との間には一気に登る踏み跡と、赤いテープの案内がなされていた。少しずつ登って行くと、目の前には可憐な清楚で美しい、イワウチワの花々の歓迎を受けた。シャッターを向けるのは帰りの楽しみにして、そのまま大岩の上に出た。
再び、快適な緩やかな尾根を辿って行く。ピークが徐々に近づいてくる。ブナの大木は未だ冬の眠りの中であったが、新緑の世界はもう直ぐであろう。尾根の残雪は既にごくわずかしかなくなっていた。西には荒々しい残雪姿の荒海山が益々近くなって来た。
傾斜を強めた尾根を一気に登り切ると、芝草山の狭い山頂に到着した。時は未だ10時前、約1時間半の登りであった。三角点標石がポツリと置かれ、北側の木には小さな山名板がぶら下がっていた。展望のない山頂は樹林の中で、ちょっぴり期待はずれであったが、やはり憧れの頂きに立てて、私は充分過ぎる満足感に浸れた。
少休憩の後、カメラを持って北へと続く稜線を辿ってみる。ピークの北側にはたっぷりと残雪が残されていた。そしてその先には展望の良さそうなもう一つのピークが眼に入った。
膝程の藪を掻き分け、これに登ってみた。南の日向倉山と西に荒海山の荒々しい山肌には圧倒されてしまうそうだ。東に見えるのは三依山と白倉山、そして日留賀岳であろうか?
再び芝草山頂に戻って休憩した。誰もいない山頂には太陽の光が届き、梢を鳴らす風の音だけが僅かに聞こえるだけだった。今日は山頂まで、残雪が殆ど気にならない尾根の道で、登山前の不安は取り越し苦労であった。この山は夏山シーズンでも誰もが登山を楽しめそうな素晴らしい山である。
下山は一気に歩き続けて、大岩に到着。ザックよりカメラを取り出し、イワウチワの淡いピンクの花たちに向け、シャッターを切り続けた。私一人が美しい花々を独占している、そんな贅沢な一時であった。
さらに下って行くと、一人の中年男性が登って来た。今日初めて会う人であった。藪の状況を尋ねてきた。やはり彼も、この山は初めてだったらしく、藪山を想像していたらしい。腰には軽量のナタをぶら下げていた。何の心配も無いほどに、藪が無かったことを話してあげると、ホットした表情を浮かべてゆっくりと登って行った。
左への分岐点を注意し、下り続けて鉄塔下で休憩とした。既に日向倉山は霞の様に、うっすらとしか見えず、カメラを向ける程ではなくなっていた。ここには立派なタラノ木があったが、未だ芽吹きには至ってなかった。
11時35分無事車に戻った。今日も下山後の楽しみは温泉入浴であった。中三依、男鹿の湯で思い切り手足を伸ばした。

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