87〜88.泥んこ道の那須三本槍岳と強風の朝日岳
三本槍岳1916.9m     朝日岳1896m
期間:2003.7.26 天候:雨(強風) 単独行 地図:那須岳 
コースタイム:峠ノ茶屋P9:45―峰ノ茶屋10:20-10:25−朝日岳の肩10:50−
三本槍岳11:40-11:45−朝日岳12:40−峰ノ茶屋13:05-13:25−
峠ノ茶屋P13:45
山行記録:那須を代表する山は、噴煙を上げ続ける茶臼岳とも言えるが、私はやはり一等三角点を有する三本槍岳であると思っている。そのどっしりと根を張った様な山容と山懐の深さ、そして展望の素晴らしさはやはり那須第一である。私は過去何回もこの三本槍岳へ登っていたが、94年5月19日(快晴)に登った時が最も印象深い。その時は山頂での大展望を楽しんで、大峠へ下り、三斗小屋温泉経由、峰ノ茶屋へ戻った。又、朝日岳は鋭いピークを持ち、その南面は荒々しくて、別名「那須穂高」とも呼ばれている。
今年の梅雨明けは遅く、既に学校は夏休みに入って一週間が過ぎていても、一向にその気配はなく、先週行って来た北海道、尻別山、羊蹄山そして十勝岳への2泊3日の山旅での快晴続きが夢の様な空模様だった。
そんな悪天候続きの中、たとえ雨中であっても、余り不安を感じないで登れる山、それは何度も登っている三本槍岳であると、那須の峠ノ茶屋駐車場へ車を乗り入れた。
麓では青空こそないものの、雨は降っていなかったが、ここ那須岳は小雨が降っていた。風さえ強くなければ、三本槍岳と朝日岳、出来れば茶臼岳へも登ろうと、雨具を着て9時45分歩き出した。山へ入っている人もかなりいるらしく、20台以上が駐車していた。狛犬のある鳥居の所へ差し掛かると、高校生の男女40人以上のグループが降りて来て、元気な挨拶を受けた。さらには次々と下山して来る人ばかり。やはり心配していた強風の為、早々に下山して来る様だった。
峰の茶屋が近づくと、風は益々強さを増し、顔を打ってくる。先行している夫婦連れがおぼろげに見えたが、直ぐにガスに消えてしまった。ひとまず峰ノ茶屋へ入り、ポカリスェットを飲んだ。先客の2グループは程なく小屋を出て行き、私一人だけが小屋に残された。
とにかく、一番遠い三本槍岳を登り、朝日岳や茶臼岳はその時の天候や体調次第で中止してもいいと思って、小屋を10時25分出発した。
ここは強風の通り道だった。飛ばされない様足を踏みしめ、体を沈めつつ北進した。
剣ヶ峰の西斜面をトラバースして先へ進むと恵比寿、大黒岩がガスの中で異形を誇っていた。気温は上がらず、冷たい雨が顔を打ち続けていた。朝日岳は全然見えない。岩稜地帯が続き、風が強く油断をすれば谷底へ飛ばされかねない、危険度の高い地点で、私はゆっくりと登り進んだ。いつも、三本槍岳へは快晴の時に登った事が多く、今日の様な悪天候の中、登って行くのは初めての体験だった。
足元にはイワギキョウやシャジンの紫花が咲いていた。慎重に登って、25分で朝日岳とのコルへ到達した。
朝日岳へは帰路立ち寄る事にして、休まず三本槍岳へと歩き続けた。
晴れていれば、ここからは三本槍岳のボリュームのあるその山容を目で捕らえつつ進む事が出来るが、今日は雨に叩かれ、展望はさらにない歩行だった。
白い花のコメツツジが可愛いそうに雨に打たれていた。やがて熊曽根を過ぎると、強風は受けずに歩ける様になった。清水平は既に池となり、西へ川となって流れていた。晴れていればベンチに腰を降ろし、静かに周囲の山々を眺める事が出来る中間地点だったが、今日はそのまま歩き続けた。少し登ると、北温泉から大倉尾根を登って来る登山道が合流した。
道が下りになると、これはもうどろんこの道で、深くえぐられた登山道はさらに歩き難い。
三本槍岳との鞍部に到着した。ここは池となった登山道だ。この北側が阿武隈川の源流であると、以前山仲間より聞いていた。
いよいよ登り道になった。一つのコブを越えたその先のピーク、ここが一等三角点のある三本槍岳の山頂だった。
登り出して2時間弱、広く平らな山頂の中央に標石が埋められていた。風は結構強い。江戸時代はここが会津、白河、黒羽3藩の境界で、春それぞれの代表が確認の為、ここへ登って三本の槍を立てたのでその名がついたとの事。北アルプスの槍ヶ岳とは違い、どっしりした山容であるから、槍の名前のつけ方が全然違っていたので、納得する話だった。晴れていれば県境の流石山から大倉山、三倉山、さらに男鹿岳に大佐飛山や高原山、そして日光連山に会津や尾瀬の山々を一望出来る大展望台の頂も、長居は出来ない。一応、雨の中での記念の一枚を撮って下山した。
どろんこの道を歩いて朝日岳の肩へ来ると、風はさらに強まっていた。こんな日に朝日岳へ登っても何も見えないが、私はかまわず東へと直進し、誰もいない朝日岳の山頂に12時40分到着した。ここも晴れていれば絶好の展望台で、北の那須や福島の山々に東の八溝、南の茶臼岳や那須野ヶ原、西の大佐飛山や塩原、高原山等を見渡す事が出来る。
しかし今は強風の危険地帯であったから、一枚の記念写真を撮って、早々に下山した。
峰ノ茶屋付近はさらに風が烈しい。体を落とし、足をしっかり踏みしめつつ、慎重に下って、13時5分到着し、小屋の中へ入った。
中には10人程が昼食を取っていた。ザックよりおにぎりとお茶を取り出して、遅れての昼食にした。雨も風もない小屋の中の食事は落ち着け、ゆっくりとこれを味わう事が出来た。
15分休んだ。先客の多くは三斗小屋温泉へ向かう人達だった。さらに風は強まっていた。予定の茶臼岳は中止し、一刻も早くこの強風から開放され、暖かな温泉に浸かりたい。冷えた体にはそれが一番だ。わずか20分で車に戻った。
今日は悪天候の中、那須三本槍岳と朝日岳登山だったが、これは悪天候の中の縦走訓練であった、と自らを慰めたい様な山行を無事終了した。
inserted by FC2 system