57.修験者を偲ぶ・石裂山    879.4m


期間:2003・1・2     天候:晴れ  単独行  地図:古峰原
コースタイム:加蘇山神社P10:20−中ノ宮10:50−奥ノ院11:00−西剣ヶ峰11:50-12:10−石裂山頂12:40-12:50−月山13:05-13:10−加蘇山神社P14:00


山行記録:その昔、修験者達で賑わった山、石裂山。鹿沼市の西に岩峰を連ね、その姿は東北道よりも容易に確認できる。私はこの山が好きで、過去何度も登っているが、半日のひまが出来ると、すぐにでも出かけたくなる山でもあった。又、この石裂山は花の日本百名山にも選ばれている山でもある。
早春,足元にハルトラノオの可憐な花が咲き、ピンクのヤシオツツジが岩肌を彩る。そして緑の夏山に変化し、ここは避暑地となる。秋の紅葉は特に素晴らしく、冬に入ると、岩は雪を纏う。時にニホンカモシカと出会うこともあるが、やはり展望の素晴らしさに感激を新たにする。遠く富士の白峰、関東平野に浮かぶ筑波山、近くの古賀志山。北に高原山から日光連山そして前日光の山々を飽きることなく眺めることが出来る。
今年は降雪のため、恒例の同級生ゴルフコンペが中止になったので、早速この石裂山へ出かけた。車を神社下の駐車場へ停めたが、ここも30cmの積雪となっていた。山支度を整え、石段を登って先ずは加蘇山神社への新年の拝礼を済ませ、奥ノ院へと歩き進んだ。
3人の中高年登山者を追い越してからは、静寂そのもの石裂山となった。杉の大木が両側に立つ参道には雪が積もり、清滝を眺め、さらに沢沿いの道を5分も進むと、栃木の名木百選にも選ばれている千本カツラが立っている。実に見事な二本の古木である。
沢沿いの道は雪と氷の道であったが、私の履いたスパイク長靴は、快適で快調に山歩きが楽しめる。30分後、中ノ院にて休憩をとった。
いよいよ岩の直登である。古い鉄鎖に変わり、ステンレス製の新しい鎖がセットされていた。油断することなくこれを登りきると、目の前に奥ノ院が現れる。以前は古い鉄の手摺だけであったのが、今はここにも新しいアルミ製の階段がセットされていた。私はこれを利用して、岩壁の懐にある奥ノ院へ拝礼を済ませた。
さらに雪の急斜面を辿って尾根を目指した。丁度奥ノ院の真上に出る地点の岩、これがカミソリ岩である。しかしここにもアルミの階段や歩廊がセットされて、以前は修験者達が辿ったであろう、岩壁をよじ登る山、石裂山も今は大いに様変わりをしてしまった。
以前来た時、ニホンカモシカに出会った雪の斜面をジグザグと登り、稜線へ辿り着く。今はただ、小鳥の鳴き声だけが山へ響き渡っていた。
稜線にはわずかに風が吹いていた。右折し少し進むと東剣ヶ峰に到着した。一呼吸の後、次の西剣ヶ峰を目指し、鎖場を降りようとした。ここにも真新しいアルミ製の手摺の付いた階段がセットされていた。以前、登山シーズンには大渋滞になってしまう地点であったが、今はスリルを求めようとしても、これを味わう事はできなくなってしまった。
西剣ヶ峰に11時50分到着。その先へ進み、展望台で昼食とし、おにぎりとお茶を胃袋へ入れた。羽賀場山から鳴蟲山、二股山へと続く山々が見渡せ、その先は鹿沼市街へと落ち込む。さらに平野部の先に古賀志山、篠井富屋連峰が小さく見え、さらに北には高原山が白く輝いていた。
石裂山へ向かい、さらに一気に下る。ここは雪を多く留めた北斜面で、以前は古い鉄製の階段が設置されても、滑落の危険があつたが、ここも真新しいアルミ製の手摺付きの階段に変わって、その危険度は緩和されていた。少々物足りなさを感じてしまうが、中高年登山ブームの今、この石裂山では死亡滑落事故も起きていたのでやむない事でもあった。
下り切った鞍部が御沢峠で、左に粟野町の賀蘇山神社へのルートが分岐していた。
いよいよ、石裂山への一気の登りとなった。西の岩壁は春のヤシオツツジが美しい所で、秋は紅葉が美しい。今は雪を纏って、これもまた美しい。さらに西には横根山がゆったりとした姿を見せていた。
辿り着いた石裂山頂は雪が一面に積もり、中央には三角点標石が綿帽子姿を見せていた。記念のシャッターを押した後、腰を降ろし、パンを食べた。今日は正月の二日、誰もここまでは登ってこなかった。一人ぼんやりと静かな時を過した。
さらに15分程北へ進むと、最高点の月山の頂に着く。ここも春はヤシオツツジが山頂を彩る所である。今は真っ白な雪が山頂を覆っていた。北には日光連山と高原山が美しく望めるはずであったが、残念にも雲が山頂部を隠してしまった。それでも私はカメラを構えて、シャッターを押した。
後は下るだけである。月山の最初の下りが最も急勾配で、滑り易い。これを慎重にゆっくりと下った。さらに杉林を下り、岩の上に石祠が祭られている地点に到達した。ここからの15分間が特に気を付けねばならない岩場の下りである。以前、死亡滑落事故のあった危険地帯であった。ここにもやはりアルミ製の階段が新設されていた。
14時、駐車場に到着し、この日の石裂山登山を無事終了した。以前の厳しい山ではなくなったとは言え、冬の石裂山は、雪山となっていた今日、私を充分に満足させてくれた。今度はヤシオツツジの花の時期に来てみたいと思った。

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