49.初雪踏んで於呂倶羅山     2020.4m


期間:2002・11・4        天候:曇り
山名:於呂倶羅山・・涸沼よりピストン  単独行       地図:男体山
山行目的:栃木の山巡り・ピークハント
コースタイム:宇都宮7:30−山王峠8:40−涸沼9:00−於呂倶羅山10:50-1100―
       涸沼12:00−山王峠12:20


山行記録:11月の三連休、最終日の県北地方は、午後より山沿いに降雪の天気予報であった。11月2日登山予定の蓼科山は、麦草峠への国道が海抜1400mより上は、真っ白な路面となっていたのでこれを断念した。それは私の車が、まだスタッドレスタイヤを履いていなくて、帰路の道が不安だったからだ。今日も日光地方に降雪があれば、心配であった。現在も山王峠への道では、日陰には雪が残り、チェーン着用の道路標示がされていた。峠の先、山王帽子山の北は、路面の雪がテカテカと凍っていた。私は予定を変更して、峠でユーターンして、太郎山登山口近くの、路肩へ駐車し、急ぎ登山支度をし、8時40分出発。
於呂倶羅山へは、東に走る送電線の鉄塔巡視路を利用して、尾根に取り付き、藪漕ぎをして稜線へと登り、さらに最西端の頂上に辿り着くルートが、一般的と聞いていた。私もそう計画していたが、やむなく涸沼よりの直登コースに変更した。
目指す於呂倶羅山は、北の空にすきっとした、美しい全容を見せていた。その麓には、白く氷を張った涸沼。直登コースでの注意は、西側に寄り過ぎると、隣接する薙への滑落であった。切込湖、刈込湖のハイキングコースを涸沼へと下った。薙の東隣りに、一直線に尾根が真南へ派生していた。ここが今回の私の選んだ直登コースで、標高差約600mである。
9時に歩き始めた。笹は胸以上の高さも有り、一応コンパスをセットする。先週末に降った雪が、笹に残り、これを漕いで行くとズボンもシャッツもたちまちにして濡れていく。
20分程で、西側にコメツガの樹林が現れ、こちらの方が歩き易そうなので、これの中を辿った。獣も同様に考えたらしく、薄い踏み跡が続いていた。
さらに登ると、空より雪が吹き掛けてきた。南の山王帽子山、男体山、三岳は良く見え、涸沼が見下ろせるが、やはり気は焦る。のんびりと展望を楽しむ余裕は無くなった。このまま本格的な降雪となっては、帰路の運転が心配になってしまう。
ほぼ中間点と思える地点は、展望の得られる快適な笹原の中。背後の三岳がさらに近く感じられ、一息を入れた。
藪の中、両手でこれを掻き分け、さらにこれをつかんで体を持ち上げて行く。足元の藪の中に倒木が隠れて、これにイヤという程、膝をぶっつけた。雪はさらに激しく降ってきた。
山頂までは、残り高度100mを切っていた。今さら引き返す事は出来ない。息が乱れて来たが、ここが正念場と、自らを奮い起たせて登り続けた。
藪とコメツガ、シャクナゲの中、これを潜ったり、掻き分けたりと進むと、尾根はだだっ広い笹藪へと変化した。ピークが近い事は、前方に空が見え出した事で感じられた。
やがて稜線に到着した。三角点のある頂上はさらに、50m程西にあるピークであった。今までと違い稜線の木や笹には、赤布や、赤テープ等、先人達の残した物が点在していて、頂上へと続いていた。何となくほっとしつつも、下山時の方向を間違う事のない様に、再度確認して、山頂を目指した。
10時50分、頂上に到着した。木には於呂倶羅山の山名板が、西と北に一枚ずつ括り付けられ、中央に三角点標石が埋まった、気持ち良いピークだった。晴れていれば好展望が得られるだろうが、今は雪が降りやんだだけでも、満足しなければならない。今朝の戦場ヶ原では、日光白根山や、温泉ヶ岳も見えたのに、今は北の高薙山と共に雪雲の中に隠れてしまった。
ほぼ計画通りに山頂に立てて満足だった。誰もこんな日に、この山に登っては来ない。私は一人、ゴクゴクとポカリスェットを飲んだ。
今日は、余りのんびりするわけにはいかない。記念のシャッターを押した後、僅か10分で山頂を後にした。しかしこの於呂倶羅山の素晴らしさは、充分に感じる事が出来、満足だ。
下りは、同じコースを辿って下って行く、真南の方向である。西に寄り過ぎない様、注意しつつ、一気に下った。雪に濡れた笹は、滑り易く、何回も尻を着く。少し西にずれたが、12時無事スタート地点の涸沼に到着した。
二組の夫婦ハイカーがのんびり歩いていた。私が突然藪の中から飛び出して、びっくり顔をしていた。
私にとっても、今日初めて会った人達だった。時折冷たい風が吹いてきたが、霜柱を踏みしめ、さらに凍てついた雪の坂を登って、12時20分山王峠に到着した。降雪予報が少し遅れたのか、ほんの少ししか降らなかったのか、今は太陽の光も届いて暖かい。わずかに残ったカラマツの黄金葉がキラキラとさらに美しく、私を祝福してくれている様であった。

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