70.春雨の中 大日向山    1176.5m


期間:2003.4.20    天候:雨  単独行  地図:川治
コースタイム:野尻大橋手前入る(戸中)林道路肩P8:10−1143mピーク9:40−
       大日向山頂10:20−10:35−1143mピーク11:15−
       林道路肩P12:10


山行記録:以前より登ろうと思いつつも、未だそれを達成していない栗山村の大日向山。特に紅葉時には全山これを纏い、鬼怒川より一気に競りあがったその美しい山容は名山の趣を持ち、早くその頂に立ちたいと強く思っていた。
藪が立ち上がる前に登るべく計画はしたものの、仕事や付き合いゴルフ等で実施出来ず、結局は4月20日になっていた。
今日の天気予報は雨であったが、5時少し前に目が覚めると、窓の外は曇り空であったが、未だ路面は濡れていない。ビーグル犬の朝の散歩をして、さらに朝食を済ませ、6時30分自宅を出発した。
川治ダムには釣り糸を垂れる人達も多かった。野尻大橋手前を左折し、戸中の集落を抜け、鬼怒川上流へ向かう林道を5分程走って、路肩に駐車し、身支度をしていると、小雨が降り出した。雨具を上下とも着て、8時10分右岸の杉林を登り始めた。
杉林の中は意外と笹竹が伸びた藪となっていた。さらに砕けた岩がゴロゴロしていて歩き難かった。出来るだけ支尾根を目指して登り進んだ。
30分後杉林を抜けて辿り着いた尾根、しかしこれは尾根といっても、300mを一気に登る岩稜の中にあるか細いものであった。
ピンクのヤシオツツジが咲き始め、緊張感を解きほぐしてくれるが、雨に濡れた岩場は滑り易い。振り返れば八汐湖が眼下に緑の水を湛え、野尻大橋も明瞭で、車がエンジン音を響かせて走って行く、意外と近く感じられた。
やがて左より尾根が合流し、937mピークに到達した。尾根としては左の尾根の方が立派であり、下山時に迷い込まない様、赤テープを巻いて右折し、次のピーク1057mを目指した。残念ながら、小雨は降り止まず、視界はさらに悪く、30m程しかなく、目指す大日向山頂は霧に隠れたままであった。
尾根は相変わらず細く続いていた。残雪は全然なく、この先の藪はいか程のものなのか、不安が頭に浮かんで来た。
やがて到達した1057mピークは笹が生い茂っていた。高度計とマップで位置を確認したが、大日向山頂は西沢の谷向こうで、わずかにガスの中、北側より競りあがる尾根が覗くだけだった。さらに南へ続く尾根は、ここよりどんどん下って行く。70m程下って、今度は登り返す。この尾根の右(西側)は一気に鬼怒川へ落ち込み、左側は西沢へ落ちて行く。さらに登ると、尾根の形もはっきりしなくなり、傾斜を増してくる。これを一気に登りきると、1143mピークとなった。ここも下山時の重要なポイント、しかも尾根形もはっきりしない。念の為ツツジの小木に、赤テープを2ヶ所巻いて、一息を入れた。
時計は9時40分、登り出して既に1時間半が過ぎていた。大日向のピークは見えないものの、このピークを左折して、やや南東に伸びる稜線を辿って行けば、後1時間で山頂に立てそうな気がする。先ずはポカリスエットを一口飲んで気を静めた。初めて大日向山へ登って、風景が全然判らないのは、やはり不安であった。
ここからの稜線歩きは、小笹が靴を隠す程度で、晴れていれば快適な山歩きを楽しめる稜線であろう。
細くも明瞭な稜線には、鹿達の踏み跡が続いていた。見晴らし台のような岩場が右手にあるものの、今はその展望はなく、ただガスの中であった。
中間の小ピークを越えると、再度下って、登り返す。前方にボリュームのある山容がおぼろに見えて来た。しかしそのピークは見えない。しかしこれが大日向山の本体であろう。再び尾根の形が不明瞭となって来た。今日のように視界の悪い時は、特に下山時にその方向を誤り易い。私は赤テープをポイントの小木に巻き、そして登り進んだ。視界さえ良ければ、ピークの特徴や遠景の山、そしてコンパス等で方向を確認出来、余り赤テープを巻く事の少ない私であったが、今回はやむを得ない。
やがて山頂の肩らしき地点に到達した。ここにも私は赤テープを付けた。残雪は消えていたが、藪は残雪に倒れた状態より、未だ立ち上がれず、寝そべった状態のまま。これは私の歩行には幸いであった。
左折し緩やかな笹の中を登り進んだ。夏ならば私の背丈を越える笹であろう。今まで見当たらなかった先人の付けた赤テープが目に付くようになった。それはほぼ10m間隔で残されていた。このテープの人達は、どうやら南の栗山ダムから登って来たようだ。
少し高い丘のような地点が見えた。これを登ると、中央に三角点標石が顔を出していた。周囲を良く見ると、RKのサインのある小さな、木製の山名板が木にぶら下がっていた。
時に10時20分、展望は全くないないが、私は間違いなく、ブナの樹林に囲まれた大日向山頂に立っていた。
かつて、南の月山や夫婦山、栗山ダムより大日向山を望んだが、今はそれらを見ることは出来ない。残雪は全く消えた山頂であった。
ザックよりカメラを取り出し、記念のシャッターを押した。その後、おにぎりを一個、お湯と共に胃袋へ入れた。
やはり展望の得られない山頂は寂しい。今も小雨は降り続き、気温も上がらず、長居は出来なかった。15分後山頂を下った。
ピークを下る時、特にはっきりしない尾根への下りには、残した赤テープは心強い味方であった。確実にこれを辿りつつ、登って来た尾根を下った。
大日向山頂、1143mピーク、さらに1057mピークよりの下り。全てが赤テープを確認し、方向を迷うことなく順調に下り937mピークを下った尾根に到達して一安心。ザックを降ろし、カメラをザックへ入れようとした。気が緩んでいたのか、カメラを落としてしまった。カメラはまるで、おむすびコロリンと一気に斜面を落ちて行った。結局30mも追いかけ、木の根に止まっていたカメラを見つけ、これを拾い上げ、思わず胸を撫で下ろした。
このカメラがなければ、私は大日向山頂に立てた事の証明が出来ないからだ。
下山時は岩も滑り、雨で地盤も緩んでいた。尻餅や擦り傷をつくりながらも、12時10分無事車に戻る事が出来た。何も見えないような山行ではあったが、大日向山の素晴らしさは充分に体で感じる事が出来、満足だった。

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