95.藪の中に消えて行く(?) メィンルート・女峰山  2483m
期間:2003・8・30   単独行  天候:曇り後雨  地図:日光北部
コースタイム:滝尾神社7:40−稚児ケ墓8:50−白樺金剛9:35−黒岩10:25―箱石金剛11:00−唐沢小屋11:25-11:30−女峰山12:00-12:15(三角点往復10分)−唐沢小屋12:35−箱石金剛12:55−黒岩13:25−白樺金剛14:05−稚児ケ墓14:25−
滝尾神社15:10
日光の山に向かうと、男体山の東に鋭い岩肌を見せ、大きく翼を広げた様に聳える山、女峰山。男体山の丸くどっしりとした姿に比して、とても名前のような女性的な山姿とは言えない。日本ニ百名山に選ばれているが、日光駅からそのまま歩いて山頂に向かう事の出来る貴重な山でもある。しかもその麓にはニ荒山神社、東照宮、そして輪王寺の二社一寺の国宝群というよりも世界遺産に登録された建物群が配置されている。
奈良時代の昔、勝道上人の開いた修験者の道は、四本竜寺を基点に一直線に女峰山へ向かい、その遺跡が山頂への間、点在している。
現在の登山道は簡便登山道とも言える、志津林道を辿り、馬立より唐沢小屋経由山頂へ、これのピストンか、帝釈山へ下山して富士見峠を経て馬立へ戻るコース。さらにはリフトを利用して赤薙山経由女峰山ピストンコース等を選択する人達が圧倒的である。
昔から使用されて来た、南の真正面より登る黒岩尾根コースは、単調で長く、そして標高差約1700mを、一気に登って行くのだから、敬遠されてしまうのも判らない訳ではないが。
しかし「女峰山を登った」との実感はこの南から一気に登り進む、修験者達が辿ったであろう、この長くて苦しいこのコースこそ第一であろう。
私が初めてこの女峰山へ登ったのは、高校3年の夏休みだったから、かれこれ40年以上も昔である。その後、6回程登っているが、この南面のコースは13年前に登った切り。今一つ記憶もさだかではなかった。この際登ってみようと、8月末に一人で出かけた。
ザックの中に、ヘッドランプとセーターに雨具を入れていた。
二荒神社別宮、弘法大師建立の滝尾神社から登ろうと、門前の空地に駐車し、歩き始めた。白糸の滝は水量も多く、爆音を山中に轟かせていた。今夕より、所によっては昼頃よりの降雨も予報されていたから、その前に下山しようと、先を急いだ。
滝尾神社はかつて修験者達が集まり、当時の日光の中心になっていただけに、その建物の重厚さや、その配置にも歴史を感じさせてくれる。先ずは本殿に拝礼の後、女峰登山道へ進んだ。ここは女峰山の女神、田心姫命を奉る神社でもあり、本殿の北には珍しい、女峰山への遥拝扉もあった。女峰登山口として理想的な場所であった。ところが、かつて歩いた道は閉鎖されていた。無理に進んでみたがやはりダメ。戻って別の踏み跡を辿ったがそれもダメ。結局、子種石の左にわずかに続く踏み跡を辿って行った。小さな赤テープが小枝に取り付けられていた。そのまま登って正規の登山道にやっと出合った。約10分のロスとなってしまった。
登山道を登り進む程、この道がかつて程に、今は歩かれていない事が感じられ、さらに刈り払い等はここ2年は一切行っていない様だ。さらに登り進み、杉林を抜けると、悲しい話を今に伝える稚児ヶ墓に8時50分到着。ここの前後は特に笹やススキが伸びていて、私の胸以上もあり、道は隠されてしまった。13年振りとはいえ、余りにも悲しい現実だった。さらに白樺の点在する笹原、でも道はさらに笹を掻き分けて登り進んで行かねばならなかった。水場の標識を過ぎて20分、白樺金剛に到達する。しかしその堂は既にその形を失い、礎石に石の屋根が重なった状態となって、本体は壊れてしまった。
笹は昨夜の雨をその葉に留めていたから、私のズボンや靴はたちまちにしてビショ濡れとなってしまった。私はかまわず登り進んだ。
やがて道はなだらかな登りから急斜面に変化した。これを登り切って尾根道に出た。さらに進んで行くと、岩がゴロゴロして、八風の標識が立っていた。晴れていれば見晴らし台になっている地点であろう。さらに岩石の尾根が続き、そしてその先はこれをトラバースして行く。ガスに巻かれた時や、雨量の多い時には要注意のガレ場となっていた。
10時25分、遥拝岩ともなっていた大きな黒い岩、黒岩に到着した。ここまで来ると、山頂までの中間点を既に過ぎているから、何かほっとした気分だ。晴れていれば女峰山頂を望め、その前には崩れ続ける赤い山肌と、そこに落ちる七滝を望見できる、休憩には理想的な場所であったが、今日は全てがガスに閉ざされていた。だが雨が降っていないだけでも救いだった。
道は向きをやや西に変えて、急斜面に取り付いて行った。これが中々厳しく、汗がポタポタと地面に落ちて行った。
登り切った先は笹のトラバース道になっていた。これは13年前とは違うコースの様な気がした。さらに向きを変えて尾根に到達すると、ここに箱石金剛が奉られていた。周囲はコメツガとシラベの樹林帯で、唐沢小屋が近くなって来たのが実感出来た。
小屋の手前にも、崩落の続く薙ぎのトラバースがあり、ゆっくりとこれを横切って行くと、そこからわずかで唐沢小屋の前に飛び出した。時に11時25分だった。
誰もいない小屋に入り、パンを食べ、ポカリスエットを飲んだ。例年、6月初めに山の会では、クリーンハイクをこの唐沢小屋を中心にした女峰山で行い、いつも馬立から登って来たが、今年は寒沢宿経由、太郎山へのクリーンハイクに参加したので、ここへは1年振りだった。
休憩後、山頂を目指した。山頂直下のガレ場をつづら折りに登り進んで行く。ここもガスの多い時や大雨の時は、危険地帯に化す所であった。晴れていれば遮る物とてないのだが・・・。樹林帯に入ると、上から男性一人が降りて来て挨拶を交わした。今日初めて会った登山者だった。
12時ジャスト、女峰山頂(2483m)に到着した。先ずは神社に拝礼を済ませた。ガスが山頂を取り巻き、展望は全く無かったが、ここは晴れていれば360度の大展望を楽しめる山頂だった。こんな日にこそ何時も気になっていた、三角点標石を訪れるべきだろうと、東の道を下って行った。10分程進むと、開けたピークがあり、その西端に二等三角点があった。ここは2463.5mと山頂よりも20m程低いピークである。ここも晴れていれば大展望が得られる所だろう。三角点に触り、写真を1枚撮って再び女峰山頂に戻った。パンを僅かに食べただけだったが、私は未だ半袖シャッツのままだったから、すぐに寒くなって来た。わずか10分で山頂を下った。
一気に唐沢小屋、そして黒岩へと歩き続けた。空から今にも雨が降ってきそうだった。休むよりも雨の降らないうちに降りてしまいたい。そんな願いも虚しく、白樺金剛迄下った時には、雨が降り出して来た。
さらに濡れた笹原の中を進むので、ズボンも靴もグショグショとなってしまった。どうせ濡れてしまったのだからと、雨具を着るのも面倒と、そのまま歩き下って行った。そんな中、チタケを一個見つけた。これは神様の贈り物だと、掌に乗せて大切に持ち、さらに激しくなった雨の中を下った。
稚児ヶ墓に14時25分到達、さらに雨はその量を増し、あたりは暗くなって来た。そして道は川と化していた。かまわず歩き続け、15時10分滝尾神社下の車に戻った。
やはり女峰登山の厳しさはこの南面を一直線に登って行く、黒岩尾根コースが一番であると実感出来た。そして北アルプス等への体力作りにも最適だろう。社内で濡れた衣服を着替えると、車の暖房で体も温まって来た。
帰宅すると、北海道大雪山では初冠雪のニュースが流れていた。まだ暦は8月である。今年の夏は冷夏だったが、夏は本当に短く終わってしまった。
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