51.晩秋の奥田沼、奈良部山への縦走   985.4m


期間:2002・11・10      天候:快晴
山名:奈良部山    彦間川上流より野峰―丸岩岳―奈良部山への縦走
山行目的:栃木の山巡り     単独行      地図:沢入
コースタイム:宇都宮7:00-彦間川上流・標高360m地点橋の畔9:10−稜線700m地点10:00−野峰11:00-11:10-丸岩岳11:50-12:15―奈良部山13:15-
       13:30−標高360mスタート地点14:20


山行記録:昨夜、大雪の塩原町では、登山予定の長者岳を、単独行の無理は禁物と中止して我が家に戻ってきた。とはいえ、私の山の虫は納まるわけがなかった。以前から気に掛かっていた田沼町の彦間の奥、野峰―丸岩岳―奈良部山の周回コースを実行しようと、7時に自宅を出発した。
彦間川を、奥へと辿る程、林道は荒れ、沢側の路肩は崩れて、心細い。標高360m地点の橋を渡った広場に駐車し、身支度を整える。カーナビでは、野峰の位置を、ここよりやや後方の西を指していたのもスタートの判断にした。
昨年、杉が植林されたばかりの様に思える、見晴らしの良い急斜面を一気に登って行く.彦間川の左岸、遥か上には、太陽の光を受けて紅葉が一際美しい、奈良部山が聳えていた。今日の最終の山であり、下山は間直ぐに谷へ落ちてくるあの尾根を下ろうと、良く眺め記憶する。
稜線には約1時間で到着した。しかし、ここの標高は700m程であり、野峰よりも低い。今ひとつ、現在地を確定する自信がもてなかった。とにかく、高い方へと歩き続ける。藪は思いのほか少なく、獣道の様な、薄い踏み跡を辿り、順調に高度を稼いだ。
岩峰のアップダウンを繰り返し、徐々に高度をあげて行く。露岩の上には石祠も奉られ、鉄の鎖も据付られてあった。ここも、かつては修験者の道であったのだろうか?ここから西、送電線と鉄塔がみえた。野峰はやはりもっと西の方らしい。
さらに先へと進んだ.注意することは、今日のコースが彦間川の分水嶺を辿るということだ。稜線がこれをずれた時、私は誤って進行していると思えばいい。
広い稜線になり、笹が膝の上になってきた。これを登り切ると、初めて登山者のビニールが巻かれた木が見え、登山道に合流した.そして、古い木の標識が野峰を指していた。
野峰は10分程登った林の頂だった。西が開けて、遠く根本山を前衛にして、日光連山が白く霞んでみえ、さらに群馬県の赤城山も雪を纏って見えた。腰を降ろし、おにぎりを頬張る。その後、三角点標石を中心にして、記念のシャッターを押した。標識も新しく、シーズンには結構にぎわいそうな感じである。
熊鷹山の標識に従い、一気に山頂を下った。振り返り、野峰を写そうとして、カメラがない。またも、鹿又岳と同じ忘れ物の失敗であった。ザックを置いて、急ぎ野峰へ登った。
カメラはポツンと草の中にあって、まずはホットした。
野峰よりは、道はしっかりと踏まれていて、木のテープも多くて安心である。
前方には、この辺の主峰である根本山、手前に見えるのはこれから登る丸岩岳であろう。晩秋の山は、木の葉を落とした木々の道。見通しも良く、風もさほど強くない今日は絶好の登山日和であった。
今まで誰にも会わない山歩きだったのが、ピークで休む六人の若者に出会った。何と彼等は自転車に乗って来ているではないか。フウフウ息を切らして、登って来た私は何なのだ。割り切れない、複雑な思いを抱きつつ、挨拶を交わした。でも今までは誰にも会わなかったので、元気な若者たちとの挨拶は、心を温かくしてくれた。
次のピークが丸岩岳で、彦間川の源流、今日の最深部でもあった。頂が近くなると、林道が山頂部近くへ伸びているのが明瞭になってきた。何もこんなところまで林道を造らなくもいいのにと、恨めしく思えた。
林道に到着した。左折すべきだったと、後悔したのには少し歩いた後だった。林道の山側が高くて、中々取り付くことが出来ない。結局、5分以上も歩いた後、奈良部山への笹の稜線に飛び込む。左折して、丸岩岳の山頂を目指した。途中、熊鷹山からの登山道に合流する。ここには、石祠が笹の中に奉ってあり、参拝者もいるらしい。これは根本山が近い為なのだろう。
12時前、落ち葉の中の丸岩岳頂上に到着した。ここにも三角点が置かれていたが、展望はなく、残念であった。熊鷹山から見れば、尾根のコブくらいにしか見えないだろうが、彦間川の母なる頂である。しかし林道が山頂近くまで伸びたこの開発は、やはり大きく自然を痛めていると思うのは私一人ではないだろう。
パンを食べて一息を入れた後、奈良部山に向かった。熊鷹山への分岐を過ぎてまもなく、道は作原へと下って行き、奈良部山への道はなくなった。またも笹の中を漕いで行き、そして狭く細い稜線を辿って進む。先人達が残した、赤テープや獣道のような踏み跡を辿った。
岩峰のアップダウンもあって、気の抜けない稜線ではあったが、今日は一日中眺め続けてきた稜線でもあり、気分の良い稜線である。
春には、ピンクのヤシオツツジや、白いゴヨウツツジが咲く素晴らしい山であると、耳にはしても、今は、白い男体山等の日光連山が美しく眺められた。風は時々梢を鳴らしていたが、寒さはなかった。
13時15分、奈良部山に到着した。丸岩岳より、丁度、一時間だった。意外と狭い山頂である。ここにも三角点が有り、小さな山名板が木にぶら下がっていた。紅葉の見所は、山頂より300m程度下った地点だった。
記念のシャッターを押した後、尾根方向を確認し、コンパスを合わせて、山頂を下った。
尾根には、先客の踏み跡か、獣道か、踏み跡が続いたが、それもやがて消えた。紅葉の林も終わり、桧の樹林帯との境が尾根となっていた。ここをくだり、さらに桧の樹林の中を下る。滑落に注意しつつ1時間足らずで、彦間川に降り立った。良く見ると、丸岩岳への登山道があった。川を渡ると、道はさらに明瞭になって、やがてそれが、林道に続いていた。ここは、V字谷の地形である。2時だというのに、薄暗い道であった。
沢水で喉を潤し、タオルを絞って汗を拭きつつ歩いた。左岸の道が右岸の道に変わらなければと、さらに林道を歩き続け、2時20分スタート地点に戻った。
私の車の他に、さらに一台の車が駐車していた。登山者のものらしいが、二台の車のフロントガラスを落ち葉が美しく彩っていた。
今日は、標高に比較して意外とハードな縦走であった。登山者には会わない今日だったが、充実した山行で、幸福感一杯の中、ハンドルを握り田沼の奥、彦間川を離れた。

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