26.霧に巻かれて幽玄の世界・三依山   1305.1m


期間:2002・3・31  天候:晴れのち曇り  単独行  地図:五十里湖
コースタイム:男鹿川の橋10:00−1118mピーク10:45−11:00−三依山11:50−
       12:10−1118mピーク12:40−12:50−男鹿川の橋13:20


山行記録:3月31日の天気予報は晴れ、午後処によって雷雨であった。今年は暖冬で降雪量は少なく、さらに春が早く、宇都宮でさえ桜は既に満開となっていた。
そんな中、残雪が溶けて行くスピードは、例年よりさらに早くなっていた。目指している、五十里湖周辺の山々は、残雪が消えてしまえば猛烈な藪に変ってしまう。自分の体力や技術では登ることが困難に思え、少し位雷雨の予報が出ても何のそのとばかり、上三依の三依山を登ろうと、宇都宮を出発した。
国道121号線を走り、上三依を過ぎ、野岩線の橋の下を抜ける。男鹿川に掛かるこの橋はコルテン鋼で出来ているのか塗装もなく、全面赤サビ状態であった。この橋のすぐ上流に、東へ伸びる林道の橋が掛けられ、これを渡る。ゲートはあるものの、乗用車は通れ、さらに芦ノ沢沿いの林道を行くと、右手にはワサビ田、その上に送電線鉄塔が見える。私は近くの路肩に駐車した。
ワカンを装着し鉄塔の巡視路を辿った。さらに雪に倒れた桧の植林帯となる。右上に見える尾根を目指して、ズボズボと雪に足をとられつつ直登していった。ここは植林後、刈り払いが行われ、雑木をナタで斜め切りされた株が多くて、これが雪に隠れていると私の脛を痛めつけてくる。涙が出そうなくらい痛かった。
痛さをこらえながら登って行ったが、時々時雪に膝以上ももぐり、サァーと滑ってしまう。木に掴まり株を踏みつけつつ高度を上げて行った。見下ろせば、男鹿川とこれに沿って、野岩線、大面集落はまるで箱庭の様だ。その上に覆い被さるように田代山が見え、この山頂へと雨雲が降りつつあった。
やっと尾根に辿り着いた。尾根には残雪はかなりまだあって滑るものの、脛を打つ木株はなくなり一安心であった。
緩やかな尾根に変化すると、右手より尾根が合流してきて、1118mピークに到着した。大きな倒木があり、ここに腰を掛けて一息を入れた。ここまで45分、結構頑張ったものだ。
雪が落ち葉を隠した稜線は、一旦下ってさらに登り返す。徐々にガスが下がって既に山頂部は包み込まれていた。私は左の芦ノ沢への分水嶺を意識しつつ、稜線を登り進んだ。
さらに南側より大きな尾根が合流し、山頂へは向きを北へと変えて行く。ここは下山の時のチエックポイントである。雪には自分のトレースが残されてはいるが、ガスに包まれてしまった今、さらに注意して下山せねばならない。
緩やかな稜線には、藪は僅かしかなく、大部分を残雪が覆っていたので、快調に歩き進めた。大きなブナの木が多いこの稜線、ガスが包み、そして漂う。視界は20mも無く、正に幽玄の世界へと入ってしまった気がした。春の芽吹きの時期は、きっと素晴らしい稜線歩きが楽しめるだろう。
さらに登り進むと、前方に小高いピークが見えた。これを登り切ると、木に小さな「三依山」の木の札が掛かっていた。
三依山にやっと登る事が出来た。時に11時50分、登山口より2時間弱だった。「三角点を大切にしょう」の白い木の標識が立っていたので、ピッケルでこの下の雪を掘ってみたが、ついに三角点標石を探すことは出来なかった。
おにぎりとお茶のランチタイムとした。誰もいない頂き、ガスに覆われてブナの木だけが目に入る。私は別世界に生きているようだった。風は僅かに吹いていたが、静寂そのもので、気が付けば、すでに20分も過ぎていた。
帰路は迷う事のないよう注意しつつ、ゆっくりと下った。要注意は右折ポイントだけだった。忠実に自分がつけてきたトレースを快調に歩き続けて、1時間10分で登山口に到着した。
帰路、男鹿の湯に足を入れると傷つけた脛が痛み出して、思わず顔をしかめてしまった。

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