41.藪山に新しい登山道・黒岩山     2162.8m            


期間:2002.8.31 天候:晴れ  単独行  地図:川俣温泉.三平峠.燧ケ岳
コースタイム:沼山峠駐車場6:00−沼山峠6:15−小渕沢田代6:50-7:00−
送電線鉄塔下7:30−赤安清水8:05-8:10−黒岩分岐9:20−
黒岩山頂9:50-10:10−黒岩分岐10:30-10:40−
赤安清水11:50-12:10−小淵沢田代13:10−尾瀬沼長蔵小屋14:15
-沼山峠駐車場15:40


山行記録:尾瀬と奥鬼怒との中間に位置する黒岩山は山深く容易に人を寄せ付けない山だ。
5年前の6月末、尾瀬小淵沢田代から鬼怒沼、奥鬼怒温泉郷、女夫淵への一泊二日の縦走をした。その時に黒岩山分岐の標識を見て、シラビソ、コメツガ等の原生林の中に微かな踏み跡があったのを記憶していた。その時は、こんな寂しい山の中を登って行く物好きもいるものだと驚いた。
今回、黒岩山行の実行については充分な時間の余裕と、最悪の場合はピークを断念することも覚悟して、前夜は尾瀬の福島側の玄関口、御池の駐車場にて車中泊した。
早朝のバスにて沼山峠に出発した。今日は夏休みの最後の週末、一列縦隊で尾瀬沼へと、大江湿原の木道を歩いて行った。今年は尾瀬ヶ原には2回も来ていたが、この尾瀬沼コースは一年ぶりである。既にニッコウキスゲの花も終わり、秋風が吹くような佇まいの大江湿原となっていた。私一人だけが小淵沢田代への分岐点を左折する。誰も歩いていない木道は朝露が一段と増えた気がした。
6時50分、小淵沢田代に到着した。平らな湿原の先に、日光白根山が顔を出していた。
さらに進むと、根曲がり竹が道を覆い被さるようになってきて、30分後鉄塔の下へ飛び出す。巡視路はきれいに笹が刈り払われて、登山道とはえらい違いである。
ここからの道では、さらに笹の背も高くなり、道を閉ざしていた。雨具を着ていない私はたちまちにして、ズボンもシャッツもズブ濡れ状態となっていた。気温が高いので私はかまわず歩き続けた。
わずかな登りだった道が下りに変化すると、その先に黒岩山が見えてきた。さらに下って行くと、赤安清水の標識があった。水場は5分程下った所なので、今回はパスした。とりあえずザックを降ろし休憩する。
道は緩やかに登った後は、さしたるアップダウンもなく暗い樹林の中を進んで行った。ここまでは誰一人にも会う事は無かった。さらに赤安清水より1時間程進むと、人声が響き、やがて黒岩山分岐に到着した。ここには3人パーティが休んでいた。挨拶を交わすと、鬼怒沼より縦走してきたとの事。
驚いた事に、標識の奥にはきれいに刈り払われた登山道が整備されていた。しっかり踏み固められ、赤布等が明示された立派な道であった。暗いシラビソ等の原生林の藪漕ぎ、これは厳しいものと本で読んでいたので、不安で頭が一杯だっただけに、これは大助かりである。何か幸運に巡りあった気がした。登山道の整備はこの夏に行われた様で、刈り払われた木の切り口は新しいものだった。
先の3人と一緒に山頂へと登り進んだ。少し登った後、山腹をトラバースする。さらに登って行くと稜線に飛び出した。
ここからは踏み跡だけが頂上へと続いていて、刈り払いはしてなかったが、赤布等の案内はあり、これを忠実に辿って登ると、ピークが近づいてきた。このピークを登りきったら、実は三角点のあるピークはその先であった。
9時50分、黒岩山頂に到着した。中央に三角点標石がチョコンと顔を出して、木には山名板が取り付けられていた。展望の良い素晴らしい山頂で、西に燧ケ岳東南には日光白根山が四郎岳と燕巣山を前景にして美しく、鬼怒沼は正に山上の楽園となって眺める事が出来た。
3人は写真を撮って、直ぐに降りて行った。私一人が取り残されてしまったが、その分誰にも遠慮する事なく、黒岩山頂の一時を満喫し、のんびりとおにぎりを食べ、展望を楽しんだ。この時は知らなかったが、下山後、黒岩山の由来となった大きな黒い岩はさらに東のピークにあると教えられた。
20分後山頂を降りた。分岐点に戻り、小休憩の後沼山峠へと往路を戻った。先行する3人を追い越した後、赤安清水にてザックを降ろし、パンとジュースの昼食休憩とした。
今日は天候も良く、燧ケ岳は山頂もはっきりと見せていた。久し振りに尾瀬沼から燧ケ岳の写真を撮りたくなり予定を変更して、小淵沢田代から尾瀬沼を目指した。
道は整備されているものの、一山を越えた後、一気に下って行く道で、かなり膝に応えるものだった。
尾瀬沼からは期待以上の燧ケ岳が望め、満足なシャッターを押すことが出来た。下山後、桧枝岐の温泉に浸かり、目を閉じると、鮮やかに黒岩山頂での展望が甦った。

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