75.晴れていれば良かったのに・鬼面山    1616m


期間:2003・5・11 天候:曇り  単独行   地図:那須岳.那須湯本
コースタイム:北温泉駐車場7:40−林道終点8:10−飯盛山8:40-8:55−鞍部9:15
       −支尾根9:40−大岩10:30−鬼面山10:50-11:10−鞍部11:55−
       飯盛山12:15−毘沙門沢12:30−林道終点12:45−北温泉駐車場13:15


山行記録:いくら那須の山とはいっても、標高わずか1366mの飯盛山と1616mの鬼面山では、既に残雪は消えてなくなり、藪は立ち上がって私の前進を阻んでしまうだろう。
しかし、今日の天気予報は曇りで夜半より雨であった。下山まで雨に叩かれることはない。覚悟を決めて宇都宮を6時に出発、北温泉の駐車場に車を停めた。
7時40分、スパイク長靴を履き、念の為ピッケルを持って歩き出した。駐車場を北に向かうと、黒い屋根の北温泉を見下ろせ、余笹川の源流部には、手前におにぎり形の飯盛山が南東部の薙ぎを痛々しく見せ、そのやや左奥に、少し重なり合うように鬼面山が望めた。やはり残雪は全く見えなかった。
北温泉のプールのような露天風呂の前を横切り、さらに余笹川を渡って、清水平へ続く、大倉尾根の登山道を登り出した。余笹川の上流には高い堰堤が築かれ、この左右のいずれかを登れないだろうかと、注意しつつ登山道を行ったが、やはりここを通行する個所は見出せなかった。やはりこの登山道を利用して高度を稼ぎ、さらに登山道を横切る林道から余笹川の支流、毘沙門沢へ降りるのが順当のようであった。
30分後、登山道を横切る林道を左折してその終点まで辿った。真正面の谷越えに飯盛山が見える。その東斜面は荒々しく崩れた姿を悲しく見せていた。林道の先に薄い踏み跡が続き、木には赤テープが巻かれていた。これを辿って下りる登山者や釣り人がかなりいるようである。踏み跡を辿って行くと、途中には階段もあって、意外とあっさり毘沙門沢に降りる事が出来、さらに飛び石で右岸に渡った。
飯盛山への登りは、崩れた斜面の北側の支尾根を詰めればいいと判断し、早速これに取り付いた。笹の藪は粗く、背丈は私の胸の高さであったから、さしたる苦労もなく登り進んだ。
8時40分、飯盛山頂に到着した。ここには山名板も、まして三角点標石もない。ただここが小藪の最高点であることを確認し、持参の紙片に山名を書いてセルフタイマーにての記念写真を撮った。ザックよりチョコレートを出して食べ、さらにポカリスェットで喉を潤した。眼下には小さく北温泉の黒い建物が見下ろせ、その手前には河川工事用のヤグラが立っていた。
15分後、地図とコンパスで鬼面山への方向を確認し、これを目指して山頂を下った。
樹林越しには鬼面山が望めたので、登山ルートを確認する。この山は東北部が一気に落ち込んでいたので、これの南縁にある尾根を辿ることにして、さらに下って行った。
やがて、藪になったが、下りであったので苦にはならず9時15分鞍部到着した
鞍部にはわずかに残雪があって、藪を隠していた。
いよいよ鬼面山への登りである。3m程の私の背丈をはるかに越えた根曲がり竹の密生地帯。これは何とも強烈で、厳しい藪である。どうにかなるだろうと、覚悟を決めて飛び込んだ。しゃにむに、藪を掻き分け、これを漕ぎ、さらに掴んで前進する。
手前に倒れ込んでいる竹は滑り易く、何度も転んでしまった。太い根曲がり竹が、3mもの背丈で密生した藪は、そうそうざらにあるものではない。私が今まで体験した藪でも最高級ものであった。さらに、念の為とザックに括りつけてきたピッケルが引っかかり、さらには自分が踏んでいた竹に靴を引っ掛けて転んでしまう。とにかく前方にみえるダケカンバの木を目指して進み、さらに尾根らしき地点を目指し、少し左に回り込むように竹の中へ飛び込んで行く、正に藪との戦いであった。
そんな藪との戦いを30分も続け、とにもかくにもこの強烈な藪を突破して支尾根に到達出来た。鬼面山の北斜面は大きく崩れていて、こちらよりの登山は危険であった。
尾根へ登ると、ここには微かな踏み跡があり、これは何とも有難い限りで、私はこれを辿って登り進んだ。
ここからも藪があったが、密ではなく今までの藪との比でない。順調に高度を上げて行った。曇天の空にはガスが湧き出して、遠景はなくなった。時々茶臼岳ロープウェイの案内アナンスが耳に入ってきた。
尾根にはシャクナゲの美しい花も咲いていて、私を歓迎してくれた。ここは芽吹き前の潅木が密生し、その中を細く踏み跡が続いていた。ザックのピッケルが枝に引っ掛かって、私の体を跳ね飛ばすようになって歩き難い。これをザックよりはずして手に持ち、木や枝を掻き分けつつ登り進んだ。そんな尾根も高度を上げるほどコメツツジが多くなって、私の前進を拒んできた。特に細い小枝は、遠近感が判別しにくく、つい目の近辺に当ってしまうこともあった。やはりメガネで目を保護する必要があったが、汗かきの私にはメガネは直ぐ曇ってしまうので苦手であった。
前方の尾根に大きな岩が見えて来た。この岩から山頂までは、15分の距離であると記録で見たのを思い出した。山頂が確実に近づいていた。大岩の左、南斜面を廻り込むように登り進み、コメツツジを掻き分けての登りに耐えた。
10時50分、大草原のような鬼面山頂に到着した。北温泉をスタートして約3時間の厳しい登山だった。北温泉の黒い屋根が、ガスの切れ間より、小さく谷底に見出せた。
曇天の空は、徐々に、そして確実に天候の崩れを予感させ、次々とガスが吹き付け、わずかに山頂部を見せていた朝日岳や茶臼岳をたちまち隠してしまった。
ここは、晴れていれば誰に邪魔されること無く、草原に昼寝も出来るし、一人静かに周囲の那須の山々を見渡すことが出来る、さらに高山の花達も咲き誇る草原は正に山上の楽園であろう。
今日の空を恨めしく見上げ、大雨に濡れるのはやはりいやなので、20分後山頂を下った。
あの厳しかった藪漕ぎ、しかし下りの苦しみは登り程ではない、45分で鞍部に降り立つことが出来て、一安心であった。さらに飯盛山へは20分で登り返した。
毘沙門沢を渡り、林道へ登り返してからは、余裕も出て来て、タラノメとコシアブラ採りに熱中した。これが私の我が家へのみやげ、天婦羅は晩酌の大好きな友であった。

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