78.山頂は親子熊の話題で持ち切りだった・袈裟丸山1878.2m


期間:2003・6・14  天候:曇り一時雨  単独行  地図:袈裟丸山
コースタイム:塔ノ沢登山口8:00−寝釈迦像8:50-9:00―ニ子山9:50-10:00−登山道合流点
       10:20−小丸山10:50-10:55−前袈裟丸山12:45-13:05―小丸山13:45―
       塔ノ沢登山道分岐14:05−寝釈迦像14:40−塔ノ沢登山口15:20


山行記録:皇海山の南、栃木と群馬の県境を辿って行くと、一際険しい峰々が屹立している山、それが袈裟丸山である。春のヤシオツツジは実に美事で、山肌をピンクに染めて咲き誇り、私達を喜ばせてくれる。私はこの袈裟丸山が好きで、過去4,5回は登っていた。
今日は県境にある、ニ子山経由で袈裟丸山へ登ろうと、一人で出かけた。梅雨入りして、10日は過ぎていた。今日の天候も、午後より雨の予報が出ていた。
寝釈迦の案内で国道より、林道西山小中線へ入り、さらに林道を右への分岐を走って間もなく、塔ノ沢登山口に到着。ここには2台の先客があったが、登山者の姿はなく、既に出発した後であった。
軽登山靴を履き、スパッツを装着して8時スタートした。登山ポストがあり、これに登山届を入れた。
道は沢沿いに舗装されていたが、やがて木橋にて左岸に渡ると、舗装道路は終わり、冷やっとする程の樹林帯へ入って行く。道は良く踏まれ、寝釈迦像へは沢沿いに進み、木橋で沢を次々と右、左と渡りつつ登って行った。
先客を一人追い抜くと、右手より沢が合流して来る。道は大きく左へ曲がり、さらに階段で急登すると、正面の小高い丘、ここに自然石に彫られた、身長約3mの寝釈迦像があり、案内板がたっていた。登山口より1.8km、50分の行程だった。寝釈迦像は頭を北に、やや西向きに腕枕をして横たわっていた。その下の沢近くには、自然石の相輪塔が見えた。水を一口飲み、さらにおにぎりを半分程食べた。
ここから北北西に尾根を辿って登って行くと、三角点を持つ、県境に位置しているニ子山のピークへ到達出来るはずである。尾根を良く見ると、獣道か人の踏み跡か、判別出来ない踏み跡が付いていた。
コンパスを合わせ、薄い藪の尾根へ取り付いた。時々テープが木に巻かれているのを目にする。やはりここを辿って、ニ子山へ登ったのか、あるいは寝釈迦像へと下山して来た人がいたのだ。しかし、尾根には鹿の糞が多く、ここを通るのは圧倒的に鹿の数が多い様だ。
時々大きな岩が現れるものの、さして難路と言う程ではなく、これを登り詰めたり、巻いて進んだりして登って行った。寝釈迦像より、約350mの高度を上げれば、二子山1556.4mピークである。笹を掻き分ける時もあったが、ほとんどが膝下までしかなく、順調に高度を上げて行った。
寝釈迦像より50分、意外とあっさりと到達したピーク、それがニ子山の山頂だった。
樹林の間より、袈裟丸連峰が見えるものの、北の切り開かれた餅ヶ瀬川越えに見えるはずの庚申山から皇海山、さらに日光連山は全てガスに閉ざされてしまっていた。
ザックよりおにぎりを取り出し、一個食べた。北方以外は樹林に囲まれた、実に静かな頂だった。
袈裟丸山側より、県境を辿った踏み跡は、完全な登山道と言えるもので、赤テープ等もしっかりと木に取り付けられていた。20分で見覚えのある小丸山へ続く登山道に合流した。
小丸山には11時前に到着した。ここには2人が休んでいた。目の前には前袈裟丸山から後袈裟丸、奥袈裟丸山へと続く峰々を一望出来、さらにその奥には皇海山を望見出来た。鋸山、庚申山は見えないものの、先週登った小法師岳は、私が登って行った尾根も、ワラビを大収穫した下りの笹尾根も、手に取る様に見え、その先には巣神山をも見出せた。
いよいよ袈裟丸山への登りである。一旦下ると、カマボコ型の避難小屋が鞍部に建ち、さらにピークを二つ越え、急激に高度を上げて行く。次々と下山して来る登山者ばかりで、今までの静かな道と違って、熊除け鈴の音が賑やかになって来た。
ロープも張られた急登に耐え、これを登り切ると、左より尾根が合流し、笹の開けた山頂の肩に辿り着いた。ガスが南より吹き付け、見えるはずの赤城山等の展望は無くなっていた。しかしここには白ヤシオ(ゴヨウツツジ)が白い花を満開にして、私を迎えてくれた。
やがて、一等三角点標石のある前袈裟丸山頂に到着した。時に12時45分だった。
2組の先客があり、小丸山の南で見かけたという、熊の親子の話題で盛り上がっていた。それは朝の事であったそうだから、私がそこを通過した1時間以上も前の出来事だった。
最初、小熊だけが笹を食べていたのに出会った登山者が慌てて引き返すと、後から登って来た野次馬登山者がそこへ登って行くと、今度は母熊もいて又びっくり、しかも母熊とは目まで合ってしまったとか。何とも危険な話であった。その後、親子熊は樹林の中へ姿を消してしまったとの事だった。
私が親子熊に出会ったのはもう10年も前の事だった。東北の和賀岳を一人で登って行くと、足元の崖下でガサガサと音がした。注意して見たら、母熊と目が合った。その後、子熊が母熊のところへ駆け寄り、樹林の中へ姿を消した。私はカメラを胸に下げていたが、シャッターを押す事も忘れ、唯呆然と熊を見送るだけだった。その事を昨日の様に思い出した。
山頂へは休む事なく、ガスが吹き付けていた。コメツガの樹林の中には、淡いピンクの花を付けたシャクナゲが咲いていた。そしてその先には後袈裟丸山が見えたが、今日はどうしても4時には下山しなければ、宇都宮の6時の約束事が間に合わない。以前に、後袈丸山迄は登っていたので、今日の登山はここで諦めた。
下山タイム3時間を考えると、余りのんびりともしていられない。おにぎりを食べ、お茶を飲んで、さらに記念のシャッターを5枚押しただけで、既に1時を過ぎていた。
慌しい登山となってしまったが、今日ここまで登って来られただけでも満足だった。
今度は是非共、袈裟丸連峰を縦走したいと思った。急ぎ下山を始めた。
途中、雨が降って来た。その量はさほど多くは無かったが、笹の中を進んで行く登山道では、たちまちにしてズボンもシャッツ濡れてしまった。
さらに弓ノ手コースと別れ、避難小屋を過ぎると、夫婦連れが登って来た。「寝釈迦像はどこですか?」と聞かれたので、「1kmほど下った所ですよ」と答えたら、今日は諦めるとの事だった。気の毒にも、朝の熊騒動で袈裟丸登頂を中止した人達だった。
休む事無く歩き続け、15時20分スタート地点の塔ノ沢登山口に到着した。急ぎ着替えて宇都宮へと向かった。

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