3.初級冬山山行・鶏鳴山    961.4m


期間:1996.2.11  天候:快晴            地図:今市
山行目的:冬山低山ピークハント  メンバー:CL鈴木.山井.浅野   
コースタイム:切石橋登山口8:30−鶏鳴山頂9:50-10:20−稜線のコブ11:00-11:30−
       登山口12:30


山行記録:今市市長畑と日光市小来川の夫々から信仰されている山、鶏鳴山は鬱蒼とした杉林に覆われた静かな山である。
宇都宮で浅野さん、そしてJR文挟駅で山井さんと合流し、今市市長畑の鶏鳴山へ愛車を走らせる。バークレイゴルフ場下を抜け、残雪の杉樹林の中、林道を分け入り、鶏鳴山登山口に到着する。西沢川の源流に近く、サラサラと流れる畔に、朽ちかけた「鶏鳴山登山口」の標識があった。
人には誰も「ふるさとの山」があると思う。今市市板橋に生まれた私にとって、それは海抜443.3mの城山であり、そして海抜961.4mの鶏鳴山である。今は立派な鉄筋コンクリート造となった母校「落合西小」は山麓の長畑川の畔、田尻にある。その校歌は「鶏鳴山に朝明けて、伝えもゆかし行川の・・・・」と始まるのであった。
身支度を整え、左へと沢を渡っていざ出発。先頭より山井、浅野、鈴木と静寂の林道を歩き出す。道には2cm程の雪も積っていた。10分程林道を歩いた後、右へと尾根に取り付く。沢沿いは杉の植林帯、尾根道が高度を上げると桧の植林帯に変わって来る。急登の後、やや平坦道となり一息を入れる。
右手はナラ等の落葉樹林、遥かに冬装束の高原山が望める。鬼怒川温泉街がその麓。さらに手前の扇状地は今市市街であり、意外と近く感じられる。梢越しに鶏鳴山の頂が見えて来た。さらに進むと、再び急登となって来る。今度は両側とも桧の樹林。まるで神社の参道の如く、私達を導いてくれた。小鳥達の出迎えを受け、やがて平坦となって山頂部へ到達した。
積雪も15〜20cm程と多くなったが、パウダースノーで快適である。さらに南へ進むと岩の上に石祠が4ヶ所、中に石仏が奉ってある。その脇の枯れた大木には梵天を上げた名残り。既に3年以上経過した様な黒ずんだ荒縄と共に何とも寂しい。
ここも過疎化の波に昔日の生活習慣が失われ、忘れられていくのだろうか。
西北側の落葉樹の先に白根から男体、そして女峰へと白銀に輝く日光連山が素晴らしい。東に、宇都宮鞍掛山の特徴ある山姿を確かめる。さらに篠井連山、その方向を手前にたどると黒々とした城山。私の生家はその左側の集落の中であった。
三角点標石を捜した発見出来なかった。(後日再登してみると、それは南へ3分程移動した場所にあった。)
休息の後、スパッツをつけ、北へと傾斜度40度近い雪の斜面を滑り下る。両手を使い、立ち木を握るも滑って転んでの連続である。北へ約200m急降下した。稜線には鹿の足跡が続いていた。二つ目のコブで昼食とした。
ここには中山(615m)と記してあった。(帰宅後、地図で確認すると、海抜840mで、中山は真東にあり、三角点もあって海抜615.1mとなっていた)日溜まりの南面に腰を下ろす。雪もなく、落ち葉はフカフカとして実に気持ち良い。
三人で山の思い出を話し、今年登りたい山の話等をしてのランチは楽しく、そして美味しいものである。三人の共通項は南アの北岳に登っている事だった。
やがて東へと尾根を下った。風もなく快晴の中、登って来た尾根が見える。この西沢川への沢筋を誤らなければ、どこを下っても道はなく同じ事だ。
45分後、沢沿いの林道へ降り立った。さらに下って行くと、たった一人、中年男性が沢の中、素手で何かを捕っている。先頭の山井さんが近づき、「何を捕っているのですか」と問えば、カジカを捕っている由、見ればポリバケツの中にはカジカが15匹程とサワガニが5匹程入っていた。何か遠い幼い日へとタイムスリップした気がした。
地元の人との事に、私の同級生の名を言えば、餓鬼大将でお世話になったとか。彼も50才に手の届く年なのに一人カジカ捕りか。のんびりとうらやましい人だ。
さすがは山井さんだ。早速カジカを見つけ手掴みで1匹捕った。これを雪の上の置き、記念のシャッターを押した。12時半、車に戻った。いつもと変わらぬ静寂の中、冷たい沢水にて顔を洗って汗を落とした。
帰りの楽しみは三タテソバである。霧下ソバと言われる長畑の地ソバを使い、地元の人達がソバの店を出しているのだ。ソバの味わいは、一に挽きたて、二に打ちたて、三に茹でたて、よって三たてソバと言う。
腰があり美味であった。店はこの味を求める人達で賑わっていた。長畑は今でこそ稲作地帯となっているが、江戸時代は天領で畑作ばかり。ソバと朝鮮人参を作っていたとか。
ただ、店の箸入れが「長畑農産物加工所」となっているのには固すぎて笑ってしまったが・・・。
店を出ると、西の空を遮り鶏鳴山が高く横たわっていた。たった一本の白樺にめぐり会えた事や、春咲くヤシオツツジ等を思いつつ、今度は小来川の笹目倉山より縦走して来たいと思った。今も温かい日差しを浴びる鶏鳴山。私にとってはノスタルジアの旅ともなった今回の山行でもあった。
かくして、私達の初級冬山山行の鶏鳴山登山は無事終了した。

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