86.梅雨空の下、誰もいない頂上だった.荒海山  1581.0m
期間:2003.7.13   天候:曇り 単独行  地図:荒海山
コースタイム:八総鉱山跡路肩9:30−荒海川9:55−町村界尾根鞍部10:15−
       大岩11:15−荒海山11:40−三角点11:45−荒海山11:50−12:05−町村界
       尾根鞍部13:05−鉱山跡路肩13:50
山行記録:藤原町と福島県田島町の県境に位置している荒海山。日本第二位の大河、阿賀川はこの山の北側にその源を発している。栃木県側では太郎山と呼んでいるとの事であるが、早春の芝草山や日向倉山から見る荒海山は荒々しい程の急峻な残雪の山肌を見せ、栃木側よりの登山道がないのもうなずける迫力があった。日本三百名山に選ばれているのも当然であろう。
久し振りに荒海山へ登ろうと、八総鉱山跡の林道路肩に駐車した。初めてこの山に登ったのは10年前の夏だった。その時は未だ鉱山跡には雑草の生え方も少なく、荒地の様であったのが、今は夏草が覆い尽くす程に生い茂ってしまった。昭和40年迄は銅、鉛、亜鉛を採掘していたとか、今はその面影は僅かしか残っていない。その後、この山へは3度登っていたが、特にH8年5月に山の会の山井さんと2人で登った時が印象深く思い出す。残雪が豊富に残された中、可憐な淡いピンクのイワウチワが咲き乱れる中を登り進むと、やがて尾根を残雪が覆い尽くしていた。途中の見晴らしの良い所で荒海山の残雪姿を写真に撮った。ところがフイルムはその1枚で終わってしまった。スペアフイルムは家の机に置き忘れていた。以後素晴らしい快晴の中、雪を抱いた周囲の山々に感嘆の声は上げても、それを写真に残す事は出来ず残念であった。残雪の中、急激に高度を上げる尾根の登りには苦労したものの、実に素晴らしい大展望、大感激の山頂だった。
今日は雨こそ降っていなかったが、周囲はガスに閉ざされて、展望は期待出来そうではなかった。林道を横切る阿賀川の源流、荒海川は激しい音を立てて流れていた。この辺では、昨夜は大分大雨が降ったらしい。
長く伸びたヨモギは濡れて、林道の中の踏み跡を更に狭くしていて、私のズボンもシャッツもたちまち濡れてしまった。
案内板に従って、右折し荒海川を飛び石で渡った。さらに堰堤を越え、支流の沢を登り詰めて行く。足元には食べ頃の良く伸びたミズナが豊富に茂っていた。やがて左手の尾根に取り付き、さらにトラバース気味に登り進んだ。この辺は早春にはイワウチワが見事な地点であった。急勾配に変化すると、ロープが設置してあった。やがて町村界尾根鞍部が近づき、10時15分到着した。歩き始めて未だ45分、順調だった。
尾根を左折し、緩やかな登りをさらに歩き進んで、1252mピークに着く。ここからは泥んこの道にアスナロ等の木の根が露出して、滑り易く確実に自分の足の位置を確かめつつ、ゆっくりと進んで行った。ホトトギスの声が山に響いてきた。
やがて1350m地点、晴れていれば荒海山をカメラに映すポイントで、早春の時、ここより撮った荒海山の勇姿が脳裏に甦った。
さらに尾根や西側をトラバースしつつ泥の中を登り進んだ。梅雨のこの時期、昨日は登山者はいたらしいが、今日は誰一人登ってきそうになかった。寂しい山に私の熊除けの鈴の音だけが響いて行った。
尾根に辿り着いてから丁度1時間が経過していた。目の前に大きな岩が現れ、道はこの岩の下を右手に辿った後、一気に登って行った。ここにもロープが垂れ下がっていた。ここが残雪に苦労した地点であった。
登り切ると、今までの鬱蒼とした樹林から開放され、明るい尾根になった。背丈の低いツツジ等の潅木帯に変化し、風が頬を撫でてきた。頂上が近づいてきたことが実感出来た。
さらに登ると、左手にその昔、無人雨量観測施設であったという、小さな避難小屋が現れてきた。そして小屋よりわずかに登って、11時40分荒海山の西峰、1581mに到着した。ガスが吹き付け、展望は全くなかった。雨が降ってなかったのが救いであった。
荒海山は双耳峰である。私はそのまま歩きを止めず、三角点標石が置かれている東峰に向かった。2mを越す笹は雨に濡れていたが、これを掻き分けつつ少し下って、さらに登り返す。5分後東峰に到着した。三角点標石に触れたが、ここは1580.4mで西峰より0.6m低いとの事である。これをカメラに納めただけで西峰に戻った。
赤飯のおにぎりを食べた。2000年に来た時には、倒れていた阿賀川源流の石碑は、元の状態に立っていた。「大河の一滴、ここに生まれる」
何も見えない山頂で、記念の写真を撮った後、15分で下山する。
下りはさらに滑り易く、注意しつつ下って行ったが、泥の道に足を滑らせ、尻餅をついてしまった。冷たい泥の感触は何とも気持ち悪いものだ。
それでも順調に下って、13時50分無事車に戻った。登り2時間10分、下り1時間45分は、やはり少しオーバーペースかもしれなかった。
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