64.そこは静かな雪の頂だった・赤倉山    1442m


期間:2003.2.23  天候:曇り  単独行  地図:中禅寺湖
コースタイム:深沢林道終点9:00−沢分岐10:00−尾根10:20−赤倉山10:50-11:15−尾根下降点11:30−深沢林道終点11:55


山行記録:赤倉山は中禅寺湖の南、半月峠より足尾、深沢に沿って南下し、赤倉に抜けた古道の西に一際高く聳える山である。
昨日の巣神山に続いて、今日も足尾の山を登ろうと、家を同じく7時30分に出発した。目指すのは赤倉山である。昨年の初冬、半月山の駐車場より半月山に登り、赤倉山のピストン登山を計画したが、仕事や天候等でこれを果たす事は出来なかった。
そんなに難しい山ではなさそうだったから、今日の天気予報「午後、所によって雨、山沿いは雪」でも問題なく思え、足尾にやって来た。
鉱山が閉山して、他に大きな産業を持たない足尾。どんどん過疎化が進み、日曜日の早朝とはいえ、人影も少ない。さらにゴーストタウンの様な誰も住んでいない廃家に、荒れ果てた赤錆の工場、さらに雑草に覆われた線路等、目にするものは悲しく、寂しい風景だった。場違いの様な近代的な間藤駅や町営アパートを過ぎ、赤倉郵便局の先で深沢林道へハンドルを切り、北進した。凍てついた雪道を抜け、林道終点広場に駐車した。2台のRV車が停まっていたが、これはどうやら猟師達の車らしい。
今日も忘れずにラジオを点け、熊除けと言うよりも銃除け鈴を鳴らして歩き出した。
沢へ下り、さらにこれを右岸へ渡り、深沢沿いの道を進み、徐々に高度を上げながら北進した。小さなダムを過ぎると、まもなく左より小さな沢が流れ込み、これを渡ると、左の杉林の中に、上へ伸びて行くしっかりした踏み跡が続いていた。この杉林はまるで包帯の様にビニールテープが地面から2m程巻かれ、ちょっと異様な風景だった。これも鹿から表皮を食べられない防護策だった。
沢沿いの踏み跡は広葉樹林帯の中を上へ上へと続いていた。一応コンパスを合わせていたが、赤倉山頂へは右の支尾根を登り、尾根を西へ辿って赤倉山頂へ至る。どこから上へ登ったらよいか注意しつつ沢沿いの踏み跡を辿って行った。
登山口より約40分、沢の中の大岩に「S41.山一」の記号が現れた。足尾鉱山、古河鉱業のマークだった。右手は大きな岩がゴロゴロしていたのが、桧の植林帯に変化していた。尾根もここからはそんなに高度差がなくなっていた。腰を降ろしてポカリスェットを飲んだ。
尾根を目指して、急登を開始した。ここの桧は全てが鹿に表皮を食べられ、商品にもならない程で、立ち枯れも目立っていた。雪はないが、やはり凍土である。油断すれば一気に落ちて行く、滑り台に変化する。ピッケルを突き立て、スパイク長靴をしっかりと踏み込んで登り、20分で尾根に到達出来た。するとここにはしっかりした踏み跡が続いていた。
もっと早くこの尾根に上がり、山頂を目指した方が楽だったかもしれない。赤倉山頂へは約2時間の行程を予定していたので、後1時間の行程と思えた。尾根も高度を増すと、残雪も徐々に増えてくる。北の谷越えには半月山へ伸びる道路が見え、意外と近く思えた。
トレースは登山者よりも猟師達の方が多く、犬の足跡も数匹はいる様だった。
尾根はやがて狭くなり、周囲の木は全て葉を落とした広葉樹に変化していた。足元の笹はきれいに鹿に食べられていた。南に雪はなく、北は雪の斜面、尾根の雪は30cm程となっていた。
やがて前方にピークが見えて来た。これを登り切ると、左より尾根が近づき、目指す山頂はもう直ぐとなった。南側の展望が開け、備前楯山と昨日登った巣神山を望む事が出来た。
10時50分、真白い雪に覆われた赤倉山頂に到着した。三角点標石は雪の下で見えないが、西側の木に赤倉山の山名板が取り付けられていた。山頂は東西に広く、半月山へ通じる緩い尾根が北北東へ続き、微かにワカンのトレースが残されていた。その他には西へと猟師達の足跡がついているだけだった。北の樹林越しに、一際高く見えるのは社山だった。
今日の午後は山沿いでは雪の予報だったから、見えるはずの男体山は姿を隠したままだ。
ザックよりパンを取り出し、一個だけ食べた。赤倉の白い頂きには太陽の光は届かず、風もない。鹿の鳴き声すら届かない静寂そのものだった。
瞬く間に時は過ぎ、既に山頂で30分近くなっていた。11時15分下山を開始した。
登る時確認した展望の良い笹原の斜面に降り、南の備前楯山から巣神山。そして県境の尾根を辿って、袈裟丸山の荒々しい雪の姿を眺め、シャッターを押した。
下りは東へ分岐する尾根に入り込まない様、注意して下り、15分で尾根を離れた。桧の樹林帯へ入った。凍てついた斜面の下りは特に滑り易く、注意しつつ下ったが、途中2回も尻餅をついてしまった。
沢へ下って古河のマークが書かれた大岩を確認した。さらにくだって、深沢へと辿り着いた。駐車地には12時前に到着し、無事赤倉登山を終了した。
春先、足尾に木を植える会へ参加した時、私達が植えた山桜の大木が気になったので、私は親水公園で昼食をとる事にした。桜の無事な根着きを確認し、来春の開花が楽しみだった。
そして親水公園でゆっくりと昼食を取った。

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