汗の中に感動を求めて
      私の選んだ 「栃木百名山」


 ロッククライミングや沢登り等の難しい技術を持たない私であったが、深田久弥の日本百名山に魅せられて、10年前の1993年10月にこれを踏破した。そして山の会に入り、ロッククライミングや沢登りの基本を教わった。次の目標を日本三百名山の踏破としてさらに日本各地にある名山を登り続けた。去る2001年10月、日本海に浮かぶ佐渡ケ島にある、金北山に登ってこれを達成出来た。その原動力になったもの、それはそれぞれの山々での感動であった。しかし、気が付いてみれば、肝心の地元、栃木の山への山登りが疎かになっていた。
 そんな時、倉持氏の「栃木の山 273」を読んだ。その中で私の登っていた山はまだ半分にも満たない。さらにその山の名前すら初めて知った山や、山名は知っていても何処にある山なのかも知らない山があった。いくら日本各地にある名山を登り続けて来ても、これでは故郷の山々に申し訳なく思った。その年(2001年)既に私は、栃木県内の2.5万分ノ1の地図を全て手元に持っていたから、早速273山を地図で確認した。(実際は275山だと思っている)すると、私が登山の時や仕事の折り折り等で、その山を見ていながらその山名を知らない山も結構多かった。
 又、その山懐の深い山や、藪が凄く、登山道のない山々も実に多い。これでは栃木の山275を登るのはとうてい不可能であると、その時は思った。とにかく手近な里山からでも登ってみようと、実行に移してみた。最初に登ったのは宇都宮市の郊外にある半蔵山だった。そして里山をさらに登り続けた。するとどうだろう、里山は私達の父母や祖父母、さらには遠い昔の祖先達が大切に敬い、親しんで来た山々が実に多かった。それが今も大切にされている時は嬉しいが、忘れ去られた様にひっそりと祠が奉ったままになっている山も多く、これはやはり寂しいものであった。又、山深い山頂であっても、明治の人達は測量器械を担ぎ上げて、正確な測量をし、その頂きに三角点標石を埋めていた。今でも登るのに苦労するのだから、当時は相当苦労した事であろうと推察出来た。
 少しずつ栃木の山々を登り続けて、今まで知らなかったその頂きに立つと、初めて味わう新たな感動が連続して来た。私は汗をかきつつ栃木の山々を登り続けた。そして又、新たな感動を味わった。次の新たな感動を求めさらに別の山に登り、さらにこれを味わった。その繰り返しの延長線に難易度の高い山々や、残雪の山々、静寂過ぎる山々のピークにも立て、さらに新たな感動を得る事が出来た。
 感動は展望の素晴らしい時、美しい花々に出会った時、残雪の中で孤独と戦いつつもそのピークに立つ事が出来た時、背丈を越す藪との厳しい戦いを抜け出してその頂に到達出来た時、何の展望も得られない樹林の中のピークで小鳥のさえずりを聴いた時、ガスに抱かれた幽玄の世界、そして柔らかな新緑の波や秋日に映える紅葉の素晴らしい時等、その山頂に到達出来た事への満足感、充実感。その山その時によって感動は異なっていても、私の心琴を揺らし、汗の中に感動を与えてくれた。栃木の山、それは北アルプスや南アルプスの険しさやスケールの大きさ、あるいは東北や北海道のお花畑等に比べれば少々地味ではあった。でも決して見劣りしない山々も結構多い。
 私はそんな地図に記載されていた山々や、三角点のみ記載されたピークに登った中で、自分自身が感動した山、100山を選び出してみた。その基準を、私はやはり汗を流しての山登り、最低1時間以上をかけて山頂に立つ山をベースに、簡単に登れる山や、余り観光地化された山を敬遠した。しかしやはり少しの例外はあった。佐野藤岡の三毳山、ロープウェイのある茶臼岳等であった。
 栃木の山、2.5万分ノ1の地図に記載された山々を全山登ってから、栃木100名山を選び出したが、そこに厳密な規格がある訳ではない。私が登ったその時々の感動の受け止め方で、選から漏れた山があれば、その山に許して頂こう。そして批判は甘んじて受けよう。とにかく100名山を絞り込む事で、私自身が考え、悩みそして時には妥協して100名山を選び出したのだから。でも、いざ100名山の山行記録集をまとめるとなると、これは意外に時間がかかった。私自身は感動を求めて、山登りを続けたのだが、必ずしもその全てにおいて記録を取ってはいなかった。自分のコースタイムやメモさえもとってない山、又写真も悪天候時には極端に少ない山も多かった。
そんな訳で山行記録をまとめる為、再度その感動を受けた山へ登った。だが山はそんな私を歓迎し、そして再度感動を与えてくれた。
「汗の中に感動を求め 私が選んだ栃木100名山」は栃木の山は実に素晴らしい、と私自身が感動した山々を絞り込み、100名山を選び出した。山好きな友人達へ是非紹介したいと改めて思った山々である。時として、私の一人よがりの感がしないでもない。それは私の感動した感度の低さ、とその未熟さであり、お許しを頂きたいと思っている。 

 2003年9月    鈴木 隆

 

栃木百名山

1.    三毳山 ミカモヤマ  カタクリの花に魅せられて   1993.2.28   
2.  社 山 シャザン  中禅寺湖の南の展望台      1995.5.21
3.  鶏鳴山 ケイメイザン 初級冬山山行          1996.2.11
4.  根本山 ネモトヤマ  初冬を迎えた根本山       1996.12.1
5.  流石山 ナガレイシヤマ 錦秋の尾根は大展望の旅    2001.10.14
6.  大倉山 オオクラヤマ   同上              同上
7.  月 山 ガッサン  紅葉の月山と夫婦山       2001.10.20
8.  夫婦山 メオトヤマ  同上              同上
9.  台倉高山 ダイクラタカヤマ憧れのピークは静寂の中だった   10.21 
10. 宿堂坊山 シュクドウボウヤマ静寂の県境縦走を楽しむ  11.24〜11.25   
11. 三俣山 ミツマタヤマ  同上               同上
12. 黒檜岳 クロビダケ  同上               同上
13. 赤薙山 アカナギサン 忘年会の翌日は赤薙山        12.2
14. 本 山 モトヤマ  手近な日帰り縦走を楽しむ      12.23
15. 地蔵岳 ジゾウダケ 年の暮に禅頂行者道を歩く      12.29
16. 夕日岳 ユウヒダケ  同上                  同上 
17. 薬師岳 ヤクシダケ  同上                  同上
18. 晃石山 テルイシヤマ  早春の県南縦走       2002.2.10 
19. 花瓶山 ハナカメサン ブナの茂る静かな峰           2.23    
20. 地蔵岳 ジゾウタケ 雪を纏った鋭峰・地蔵岳         2・24
21・ 葛老山 カツロウヤマ 残雪踏んで葛老山           3.2
22. 高瀬山 タカセヤマ  残雪の高瀬山             3.3
23. 横瀬山 ヨコセヤマ  ダムの底に沈む登山口・・・?     3.10
24. 高 山 タカヤマ  湯西川の高土山と高山へ単独行     3.17
25. 白倉山 シロクラヤマ 山頂でのコーヒーブレイク       3.24
26. 三依山 ミヨリヤマ 霧に巻かれて幽玄の世界        3.31
27. 向 山 ムカイヤマ  早春の向山              4.6
28. 日向倉山 ヒナタクラヤマ 残雪わずかの日向倉山        4.7
29. 芝草山 シバクサヤマ イワウチワに魅せられた芝草山     4.13
30. 持丸山 モチマルヤマ 藪を抜ければそこは楽園        4.27
31. 馬老山 バロウサン 早春の大笹山と馬老山         4.29
32. 男鹿岳 オジカダケ 五月の連休は秘峰を目指す       5.4〜5.5   
33. 大佐飛山 オオサビヤマ 同上                 同上
34. 手白山 テシロサン  秘湯の奥に佇む手白山   2002.5.12
35. 錫ヶ岳 スズガタケ 遥かに遠い頂にテント泊単独行    6.8
36. 高倉山 タカクラヤマ 安易な判断迷い道           6.16
37. 南月山 ミナミガッサン 那須信仰の山            6.29
38. 行道山 ギョウドウサン 関東の高野山を訪ねて        6.30
39. 大 岳 オオダケ 小田代ヶ原と戦場ヶ原を見渡す     7.14
40. 前黒山 マエグロサン 背丈を越す藪漕ぎの前黒山       8.11
41. 黒岩山 クロイワサン 藪山に新しい登山道          8.31
42. 塩沢山 シオザワサン 五十里湖の北に聳える塩沢山      9.1
43. 黒滝山 クロタキサン 秋の黒滝山単独行           10.5
44. 日留賀岳 ヒルガタケ 紅葉の日留賀岳とカメラ置き去りの鹿又岳10.14〜15
45. 鹿又岳 シカマタダケ 同上                 同上
46. 大真名子山 オオマナゴサン 秋雨煙る大真名子山・小真名子山 10.20
47. 小真名子山 コマナゴサン 同上               同上
48. 大平山 タイヘイサン 秋雨の中を黒檜岳から大平山      10.26
49. 於呂倶羅山 オロクラサン 初雪踏んで於呂倶羅山       11.4
50. 安戸山 ヤスドヤマ 早過ぎる雪の安戸山          11.9
51. 奈良部山 ナラブサン 晩秋の奥田沼、奈良部山への縦走   11.10
52. 明神ヶ岳 ミョウジンガタケ 山頂での鍋パーティ       11.16
53. 若見山 ワカミヤマ 初冬を迎えた若見山          11.17 
54. 白倉山 シロクラサン 木々に白い花咲く白倉山        12.7
55. 白根山 シラネサン 新雪訓練の白根山           12.8
56. 尾出山 オデヤマ 年の瀬の尾出山            12.30
57. 石裂山 オザクサン 修験者を偲ぶ石裂山      2003.1.2
58. 雨巻山 アママキサン 年の初めに雨巻山            1.5
59. 岳ノ山 タケノヤマ 松飾りも終わって            1.13
60. 氷室山 ヒムロサン 早とちり失敗山行の氷室山        1.18
61. 仙人ヶ岳 センニンガタケ 早や春の日差し           2.2
62. 大萱山 オオカヤサン も歩いた稜線を辿って大萱山      2.15
63. 巣神山 スガミヤマ 銃声響いて腰も引ける          2.22
64. 赤倉山 アカクラサン そこは静かな雪の頂だった        2.23
65. 羽賀場山 ハガバヤマ 静かな一等三角点峰          3.2 
66. 鴫内山 シギウチヤマ 春を待つ鴫内山            3.22
67. 三 岳 ミツダケ 雪未だ深い三岳             3.23 
68. 小佐飛山 コサビヤマ 残雪のテント泊単独行        4.12〜4.13
69. 長者岳 チョウジャダケ 同上                同上
70. 大日向山 オオヒナタヤマ 春雨の中の大日向山     2003.4.20
71. 高薙山 タカナギサン 遥かなる秘峰              4.27
72. 平五郎山 ヘイゴロウサン 寂しくもあり石の祠         4.29       
73. 日加倉山 ヒガクラサン 早や残雪は消えてしまった日加倉山   5.4
74. 燕巣山 ツバクロスヤヤ どうにか残雪が残っていた燕巣山     5.10
75. 鬼面山 キメンザン 晴れていれば良かった鬼面山       5.11
76. 太郎山 タロウサン 日光クリーンハイク寒沢宿経由太郎山   6.1
77. 小法師岳 コホウシサン 帰りはどっさりワラビのみやげ     6.7
78. 袈裟丸山 ケサマルサン 山頂は親子熊の話題で持ちきりだった  6.14
79. 中倉山 ナカクラサン 私の目の前を熊の親子が歩いて行った   6.21
80. 鬼怒沼山 キヌヌマサン 高層湿原の美しい花々と懐かしい人との出会い6.22
81. 田代山 タシロサン 梅雨の時は湿原のワタスゲが美しい    6.29
82. 帝釈山 タイシャクサン 同上                  同上
83. 庚申山 コウシンサン 梅雨の晴れ間の縦走           7.5 
84. 鋸 山 ノコギリサン 同上                  同上
85. 皇海山 スカイサン 同上                  同上
86. 荒海山 アラカイサン 梅雨空の下、誰もいない頂上だった    7.13
87. 三本槍岳 サンホンヤリタケ 泥んこ道の三本槍岳と強風の朝日岳  7.26
88. 朝日岳 アサヒダケ 同上                  同上 
89. 鶏頂山 ケイチョウサン ガスに巻かれた鶏頂山と釈迦ヶ岳     7.27
90. 釈迦ヶ岳 シャカガタケ 同上               同上
91. 男体山 ナンタイサン  37年振りの登拝祭参加        8.1〜8.2
92. 古峰ヶ原山 コブガハラヤマ 微かにも修験者の道       8.10
93. 高 山 タカヤマ 中禅寺湖の静かな展望台         8.23
94. 茶臼岳 チャウスダケ 噴煙を見つめて登る茶臼岳        8.24
95. 女峰山 ニョホウサン 藪の中に消えて行く(?)登山道       8.30
96. 鳴虫山 ナキムシヤマ 山頂は静寂そのものだった        8.31 
97. 温泉ヶ岳 ユセンガタケ 金精峠から温泉ヶ岳、そして根名草山  9.20
98. 根名草山 ネナクサヤマ 同上                  同上
99. 古賀志山 コガシヤマ 愛犬と初めてあるいた古賀志山     9.23
100.前白根山 マエシラネサン 白根山の展望            9.28

あとがき




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